ヘフリガーの芸術
バッハやモーツァルトの素晴らしさは言うまでもないが、今では手に入りにくいリート集も見事。中でも「水車小屋」。完成度から言えば、彼自身の後年の録音の方が高いし、美しさから言えばこれより美しいものは他にもある。しかしながら、これほどまで主人公の心情に肉薄した生々しい演奏は、他には見られないのではないか。愚かしいほどまでに純朴な青年の、それゆえに純度100%の恋心から生じる喜びや焦り、悲しみが、いささかのわざとらしさもなく歌いこまれ、現代では鼻で笑ってしまいそうな恋物語が現実のものとなって迫ってくる。他にも、シューマン、ヤナチェックなども素晴らしい。テクニックだけではなく心で歌われる歌唱だ。この人が60を越しても現役として舞台に立てていた理由がよくわかると同時に、ドイツ系声楽家の王道を行っているように見えながら、実は非常に個性的な歌い手だったこともよくわかる。
それにしても、これだけの名演の中に、手に入りにくいものが多数あるというのは、実に残念なことだ。リヒターとのバッハだけがヘフリガーの全てではない。分売・再販を強く希望します。
秘密と嘘と民主主義
この本もその他のN チョムスキーの著書の例にもれず、ただ漫然とニュースをきいているだけではわからない、世界の事実について開眼させられます。とにかく反アメリカとかそんなことはどうでもいいので、まず読んでみるべきだと思います。
世界をとりまく現状についてすごく考えさせられます。一人の有権者として、日本を正しい方向へ動かせるよう何をしていけばいいのかを深く考えさせられました。
秘密と嘘【字幕版】 [VHS]
マイク・リー監督は脚本を書かず
個々の役者達と役について長い期間話し合うという。
役者達は役になりきってカメラの前に立つ。
彼らが話す言葉は彼らの心が紡ぎだす本当の言葉。
僕達の生活に脚本がないように彼らの世界にも脚本はない。
映画の中のすべての「秘密」と「嘘」は本人達しか知らない。
僕達の世界と同じように。
何気ない人生のひとコマを描いているだけなのに
こんなに引き込まれるのはなんでだろうか。
見終わった後に自分の人生も捨てたもんじゃないと
ほんのり思えるそんな映画です。
人生は、時々晴れ [DVD]
晴天ばかりの毎日より、曇りや雨があることで晴天のすばらしさを実感できる。人生も同じ様に、辛いこと、悲しいことが起こったときは逃げ出したくなるかもしれない。だが、それを経験することで嬉しいことや楽しい事がより大切なものとなる。そして、何よりも愛するものが側にいてくれること。それが重要だと教えてくれる映画です。
秘密とウソと報道 (幻冬舎新書)
戦後のジャーナリズムがかかわった大きな事件を題材に、著者独自の視点からここ最近に見られるジャーナリズムの危機に切り込んでいる意欲作。
著者もジャーナリストであるせいか、大きな事件の陰にあったわれわれの目に触れないような裏話まで披露してくれるところが実に面白い。それにしても、捜査資料を無断でコピーする奈良少年供述調書漏えい事件や、情を通じて機密資料を入手した西山事件、泥棒をして書物にしてしまうサンダカン八番娼館の問題などなど今のマスコミに通じるスクープ報道とは一体何のためにあるのかと疑問に感じてしまう。
このほか、マスコミの周辺にたびたび現れる「空想虚言癖」の人物にやすやすと引っかかる週刊誌、賠償額が高騰する名誉棄損訴訟などなどジャーナリズムに起こる問題を著者独自の視点で切り込んでいる。
ここ最近の新聞や雑誌の凋落ぶりを危惧しつつ、明治時代にあったような週刊誌的な新聞を取り上げており、これからの新聞の一つの方向性を見せてくれている。