ウルフガイ‐THE ORIGIN‐【下】狼の怨歌 (マンガショップシリーズ 429)
オリジナルのウルフガイ、待望の復刊です。
上巻の内容はかつて奇想天外社より一度出版されていましたが、この巻の内容は一般向け書籍では初刊行となります。
小説版「狼の怨歌」は一部性的な描写とCIA非合法工作員のメンバーにチーフスンを加えた以外はほぼ正確に本作をなぞっており、暴力的で残酷な描写(生体解剖を行う狂気の医者や米中秘密工作員の酸鼻を極めた殺し合い)、望月三起也氏の作品と同じく最も早くスタームルガー・ブラックホークやウェザビー・マグナムと言うような強力な銃の固有名詞を少年誌に載せた嚆矢的作品であるなど、余りにも大人向きの内容に驚きます。
坂口尚氏の自由闊達なペンタッチは時代を超えてその素晴らしさが良く解かります。
氏の軽快でユーモアを失わない作画のお陰で前記の酸鼻を極めた原作世界が大分緩和されています(手塚医師のキャラクターデザインやその最期はやり過ぎですが)。
この巻から登場する魅力的な悪漢「西城」は文庫版・生頼範義氏の挿絵と本作とのキャラクターデザインの比較も楽しめます。
原稿が紛失して印刷見本や掲載誌を基にした部分も現在のデジタル技術でかなり修復されており、金額に見合う仕事がされています。
個人的には当時、定期購読していた小学館の学年誌から漫画専門誌に移行したいと考え、親に交渉して児童向け漫画週刊誌「ぼくらマガジン」を試験購入して貰った所、検閲した親が本作や永井豪氏、ジョージ秋山氏、絵は優しい物の孤児の人身売買や試合に負けたレスラーの制裁死等内容は凄惨だったタイガーマスクに怖気づき却下された苦い思い出が有るだけに嬉しい再刊です。
70年代、坂口尚氏がぼくらマガジンやタイガーマスク別冊に発表した短編にはとても子供向けとは思えない無常観溢れる怪奇物(「生き人形」や「あおびょうたん」)が有ったと記憶しております。
こちらも限定発売はされていた模様ですが何卒多くの眼に触れる形で再発される事を祈っております。
石の花(3)内乱編 (講談社漫画文庫)
第二次大戦中のユーゴスラビアのマンガです。ドイツの侵攻下の状況です。
示唆の多いマンガです。
ドイツの将校は言います。
「大衆の心をとらえるには『理性でなく感情にうったえろ!』
『人間は本能 衝動の反射神経のかたまりとして扱え!』
『いかなる宣伝も民衆的でなければならず
知的水準を中でも最も愚鈍な連中の受容能力に応じたところに
おかなければならない』ナチスは実践した!」
パルチザンに身を投じた少年は,戦場での結婚式に立会い,目をとじて思います。
「それなのに笑った
それだから笑ったのか・・・」
直後に敵機来襲を受けます。
「操縦士の顔が見えた。
人間だ
人間だった!!」
緻密な考証に基づいていて,戦争とわれわれの暮らしがいかに地続きになりうるのかを示します。
戦時を描いているのにとてもやさしい絵です。
さすが手塚治虫の弟子です。
石の花(2)抵抗編 (講談社漫画文庫)
登場人物の言葉一つ一つが身にしみる・・・
複雑な地域の民族間紛争ではあるけれど、その複雑さが苦にならないような描き方には
感心します。
細部にわたって調査がされているので、歴史の勉強のとっかかりとして読んでみるのもいいかもしれません。
私はお正月休みにふとこの本を手にし、朝から晩まで一気に読んでしまい、読んだ後には大泣きしていました。いったいなぜあんなに涙がでたのか・・・
自分を信じ他人を信じ、そうしなければ生き続けていけない、それはここ日本にいても同じ。
この本に流れているテーマは普遍的でそして重いです。
おすすめの1冊です。作者が既に故人であるのが残念でなりません。
100万年地球の旅 バンダーブック [DVD]
当時手塚治虫は虫プロ倒産の後は漫画に専念していた。しかしアニメの夢は忘れることできず、ついにこのアニメで復権を果たす。
演出・原案・構成: 手塚治虫 チーフディレクター・キャラクターデザイン・美術構成: 坂口尚
手塚は当時莫大の量の連載を抱えており、このアニメが完成したのは実は放映当日であったというのは有名な話だ。しかし、手塚は決して手を抜かなかった。その情熱がこのあとの3本の24時間テレビアニメとなって結実する。それが虫プロの再結成の礎となり、今に続くのである。坂口尚が一作目から関っていたのも注目。この人も実は天才肌のアニメーター、漫画家であった。
チルドレン [DVD]
伊坂幸太郎さんが原作の物語です。大森さんが陣内役にぴったりはまっていてカッコ良かったです。ただ注文をつけるならあくまで「チルドレン」中心で話を進めるのなら原作上の「バンク」にあたる銀行強盗のエピソードは必要なかったのではないかと思います。加瀬さん演じる永瀬の位置付けが微妙でしたし、永瀬の頭の回転の早さもあれだけでは説得力がありませんよね。