YOSHIKI/佳樹
波瀾万丈のロックスターの半生を描けば面白いのは当然です
しかし――TAIJI脱退のエピソードではTAIJI等の話とは食い違い、GLAYが離れた理由は美化されて濁される。
散々YOSHIKIが版権について学んだ、と書かれているのに、CBSを離れた件は理由も無く流される……
この辺りは全て金が絡んでいるそうですが……そのような読者は知りたく、YOSHIKIに都合の悪いことは徹底的にぼかされるか、流されるか、美化されるか
その果てに残ったのは、YOSHIKI礼賛と、詩的な表現に彩られた小説でした。
例えば、hideと初対面したときのエピソード。
ここでhideが話している内容は、後年hideが「YOSHIKIを見た印象」として語った物であって、その場で述べた物ではありません。
内容の大半が既出ですが、あくまでYOSHIKI中心に改変されているのも、小説だという印象を強めます
また、YOSHIKIを美化する余り、他者の事までねじ曲げたり、当人の発言と異なるのは如何な物でしょうか?
エターナルメロディーに関して描かれていますが、ロンドンフィルは「ポップスは絶対に演奏しない」「格調と伝統だけを重んじる」楽団と描かれ
そして、(YOSHIKI本人はアレンジしていないはずの)アレンジを聞いて感動したと言う美談にされました。
ロンドンフィルが映画音楽やポピュラーミュージックにも積極的に関わっていることや、YOSHIKIが(他人のアレンジだから)アレンジが気に入っていない曲もある、と発言したことは無視されています
また、筆者が音楽に明るくないのでは? と感じたのも気になります
――母にねだって買って貰ったのはクラレンス・レオニダス・フェンダーがデザインしたストラトキャスターという四万円ほどのエレクトリックギターだった(中略)手に入れたフェンダーは触れることが無くなり――
本文からの引用ですが、時代背景と値段を考えれば、フェンダー製ではなくコピーモデルでしょう。当時のフェンダー製ならばhideのレスポール同様「友人の友人が隣町から見物に来る」ものですから
この説明的な文と相まって、音楽への造詣が薄いのではと感じました、また、それは所々感じる箇所がありました。
同時に、エターナルメロディーとのエピソードも合わさって、YOSHIKIはちゃんとチェックしたのか? とも感じます。
評伝とはいえ、作者のフィルターが入るので必ずしも事実を描く必要はありませんし、不可能です。
ですが、本人のインタビュー等とも矛盾するのはただの創作です。そして、創作としての出来は辛いものでした、小説か評伝かどっちつかず、取材も明らかに不足しています。詩的な表現も私には合いませんでした
ただ、素材が素材だけにこの評価で。