事件記者―新婚夫婦殺人事件 (幻冬舎アウトロー文庫)
あんまり評判にならないけれど、事件記者シリーズは、読み物としては非常に面白い作品。
一時代前の新聞記者と警察のやり取りや、新聞記者同士の競争が事件を軸に描かれている。作者の懐古趣味はあるけれど、最近の警察のダメぶりや、公式発表しか報道できないといわれている新聞記者の話を聞くと、この当時は、両方に熱いものがもっとあったのかなと思わせる。
3巻セットでお勧め。
権力にダマされないための事件ニュースの見方---
他のレビュアーが書いているほど期待はずれの本ではなく、さまざまなことを考えさせてくれる本ではあるが、ただ、死刑存廃問題に関心をもっている私からすると、第4章「死刑についての逡巡」だけはどうもいただけなかった。
これは、藤井と大谷がこの問題についてほぼ同じ結論をもっていて「なれあい的な議論」しかしていないせいであろう。要するにお二人とも、「とめどもない大量殺人や、被害者遺族の痛憤の念を考えれば、死刑存置もやむなし」というあたりに、結論が最初から決まっているから、白熱のディベートにならない。
特に、大谷が冤罪の危険性の話を高速で走る新幹線の危険性に例えて「どんな制度でも危険性がともないます。たとえば、新幹線を開通させる。時速300キロで走る電車から事故の危険性をなくすことはできません。一方、危険だから開通を見送ろう、という話にはなりません。それは、多くの人がメリットを享受できるからです」(113ページ)と言って済ませてしまっているのには、失望した。対談相手が森達也なら、この軽々しい断定には噛みついただろう。
「まちがって執行した場合にとりかえしがつかない刑罰」を定めて他人を共同体から完全抹殺しようとする制度を、文明の利器に例えるのは、筋が違っている。私は、宗教の見地から死刑をあれこれ論ずるのは、好まない人間だが、この点に関するかぎりは、現代書館の『宗教者が語る死刑廃止』の104ページのほうが、まともなことを言っていると思う。
冤罪の恐怖 人生を狂わせる「でっちあげ」のカラクリ
村木事件で、「検察はひどいことをする」ということが、
やっと世の中に知れ渡った気がする。
しかしそれまでも、検察はまさに、したい放題をやってきた。
そもそも検察は、捜査権も逮捕権もあるという、
絶対権力なのである。
賛否両論あるにしても、小沢一郎は検察に葬られようとしている。
メディアは検察からの一方的な情報しか流さない。
メディアは検察を監視しなければならないのだ。
足利事件などが取り上げられた本だが、
もう少しメディア論、政治的背景にまで切り込んでもらえると
さらに深みが増したと思う。
その点だけ割り引いて、星4つ。