female [DVD]
オムニバス映画にロクなものはない。それぞれのエピソードは「なんや、これ?」程度のもので、「官能」を表現するのに、この短さでは監督も力量を発揮できないだろう。でも、石田えり大好き。高岡早紀も大好き。野村恵里も大好き。3人とも(長谷川京子を除く)スクリーンの上に「女性」をムンムンさせることのできる名女優だと思う。それぞれの女優ファンならお金を出して買っても損はない。
桃―もうひとつのツ、イ、ラ、ク (角川文庫)
文庫化に当たり著者は本書がツ、イ、ラ、クと対であることを明確に示すタイトルにしました。
桃の物語たちをツ、イ、ラ、クを読まないと味わいが激減してしまうのは、確かなことです。
マーケティングでは対であることを示すことは不利といわれているにも関わらず、そう決定した作者にまず拍手。
準子ちゃんが14才で落ちた恋愛事件の周囲の風景、および本人の回想からなる短-中篇の小説です。
長命市にもう一度さまよいたかったのは、読者だけではなかったのですね。
著者もみなの人生を堪能しながら、サイドストーリーを著しました。
ツ、イ、ラ、クの甘い物語を抑える頑なな文体を手放し、豊かな叙情性をたたえた物語たちでした。
しかも読者を裏切るのが、キャラクターのたった主要な脇役を主役に据えるのではなく、そう言えばこんな登場人物も居たっけな人々からあの時代を語らせたのが ウマイ!!!!!
長命市の物語は作者にとっても本当に奇跡のようなストーリーだと思います。
文才があふれるのに泥をすするような日常から、本当に美しい花を人生で咲かせた得がたい時代に著された物なのでしょう。
今まで関わってきて、今はどうしているのだか分からなくなった全ての友人たちの幸せを祈らずには居られない1冊でした。
リアル・シンデレラ (光文社文庫)
そういえば直木賞候補になったんだよなあ、きっと取るよなって思ってた。
でも取らなかったのって、なぜ?
文芸論はよくわからないけれど、こんなに地味だけど、でも人の幸せの本質をこんなにするっと教えてくれた本ってあったっけ?
今、自分が自分がって言う人ばかりで、競争ばっかりで、そんなときに「人の幸せを幸せと感じられること」について考えることってどんなにか大切なことだと思う。
内容は多くの方が書いているような本当に地味な女性の話。
それが、泉ちゃんのことを思い出すと涙が出ちゃったり、彼女と小口とのデートが本当に理想の幸せなデートだなって思えるくらい、なんだか私はのめりこんでしまった。
一人でも多くの人に読んで欲しい。
そうしたら、悲しい事件がもっともっと減ると真剣に思う。
なんで取らなかったのかなとおもって直木賞の選評を立ち読みしたら、浅田次郎と宮部みゆきが絶賛していて、特に宮部みゆきが「姫野さん、この作品を書いてくれてありがとう」って書いていた。
私もそう思う。姫野さん、ありがとう。
選評読むと「なるほどー、この人が反対したんだー」って思いますよ(笑)。
ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)
姫野カオルコによる直木賞候補にもなった恋愛小説。
正しくは「恋愛群像劇」とも言える。
舞台は人口4万人の町。
中学生の隼子と教師の河村。
そしてそれを取り巻く実に多くの人間が織り成すストーリー。
本作最大の魅力はその数多い登場人物の個性だろう。
思春期特有の微妙な心理の複雑さや陰湿さが、実に細かく、丁寧に描かれている。
生き生きと、伸び伸びと、時に鬱々と。
しかし彼ら脇役の個性が主人公二人を損なう事は決してない。
緻密な脇役というディティールを丁寧に確実に積み上げることによって、
むしろより主人公を引き立て、且つストーリーの重みと厚みを増す役割を見事に果たしている。
ラストが爽快な恋愛小説の傑作。