花と夢
のっけから辻睦詞氏の甘く透きとおるヴォーカルから始まる「Thinking of Love」もうこれでノックアウトである。
以降も、前作のどちらかと言うと無機的なサウンドから一枚脱皮し、ポップで華やかで、まるで何色もの美しい糸で織り上げた織物のようなカラフルで上質なサウンドを聞かせる。
シングルにもなりFM802のへヴィローテーションにも選ばれた「春のまま」や、「緑のマーメイド」「ひらひら」などは可愛すぎて戸惑うくらい。
個人的には素朴ながら大きく広がっていく美しいメロディーが印象的な「夢の約束」がベストトラック。
詩人の血最高の名曲?「オリオン」も収録。
秋風に吹かれながら、紅茶を飲みながら聴いてみてください。
What if・・・
僕は彼らが現役の頃、詩人の血というバンド名と辻さんのヘアースタイルから誤解していた人間です。こんなにピュアなネオアコ調の曲を書くバンドだなんて。そして、本作は記念すべきデビュー盤に当たり、1989年にエピックソニーより発売されています。僕はこれを最後に買いました。単に中古で探していって、最後だったというだけですが、とにかく1stを最後に聴くことにになったわけです。M1はまさにネオアコファンならジャストフィットな名曲「青空ドライヴ」でとてもピュアな気持ちになれます。そのあとは、もろにネオアコってわけではなく、初期衝動に突き動かされたかのようにいろいろなタイプの曲をやっています。「青空ドライヴ」はネオアコですが、詩人の血の持つ資質は、むしろニューウェイヴ的な要素が強かったように思います。ラストM10「バタフライ」は、しかしまたネオアコ的な名曲で、壮大かつ繊細な曲です。辻さんの書く詞は、簡単な言葉を使いながらも、どこか不思議な印象を残す詞で、美しいものは儚いものなのだという大きなテーマを持っています。
とうめい
詩人の血、1990年のセカンドアルバム。
ここでの詩人の血は、セカンドということもあって、さまざまなことにチャレンジしている感じです。そういうわけで、かなりの試行錯誤が感じられるアルバムとも言え、幅広いタイプの曲があり、歌詞も英詞あり、方言ありとバラエティ豊かです。音的には、ネオアコっぽいギターが印象的なM2、80年代クリエイションみたいなギターのM7など、後の彼らに比べるとまだまだラフな感触があります。とはいえ辻さんの歌声は、やはり素晴らしく、その辺がポスト・フリッパーズみたいなバンドとは大きく違うし、歌詞がまたユニークです。方言丸出しの「ドイツク」にはびっくりだし、「きれいだね」の"でも馬鹿"というオチも挑戦的であると思います。その後、Oh! Penelopeに至るまで、どんどん洗練さを増していきますが、この初期の個性もなかなか捨てがたいなと思いました。