チャイコフスキー&メンデルスゾーン
音楽自体はそれほど深いものでもないので、軽く楽しむには好適。前橋氏の特徴がよく表われているのがメンデルスゾーンで、冒頭のあの退屈なメロディーが彼女の手にかかると非常な情感を持って響いてくる。
前橋汀子 ベスト・コレクション
前橋汀子さんの音楽から醸し出されるその繊細な演奏のニュアンスは手に取るように感じられます。物凄く丁寧に弾く方で、ケレン味のない真っ当な王道の演奏といえましょう。
若い時から日本を代表するヴァイオリン奏者ですから、当然なのですが、技術的にもしっかりと丁寧に演奏されています。何より真摯な演奏スタイルですから、正統派のヴァイオリニストですね。情熱的な音楽に対しても、けっして崩れることがなく、作曲家の意図を考え、音楽と正面から向き合っているのが感じ取れました。
エルガーの「愛の挨拶」では気品が感じられ優しさに満ちた音楽が展開されます。メロディーの美しさを際立たせるような高音の伸びが心地よかったです。
マスネの「タイスの瞑想曲」は、ヴァイオリンの曲集として多く取り上げられる名曲で、丁寧に慈しむように歌い上げています。
ドヴォルザークの「わが母の教えた給いし歌」の懐かしさと寂しさが入り混じったような哀愁を伴う演奏に心が動かされます。低音の重厚な響きがボヘミアの大地を髣髴とするような雰囲気を醸し出していました。
1984〜2001年に発売された「ヴァイオリン小品集100」のシリーズからのベスト・セレクションです。何十年とヴァイオリンに向き合ってきた前橋さんの音楽性の深さを感じさせるまさしくベストの演奏を収録したアルバムだったと思います。
彩~アニヴァーサリー・アルバム
NHKのラジオ深夜便で 偶然 前橋汀子さんのインタビューを聞き、うとうとしていたのが、すっかり目が覚めてしまいました。ずっと以前から 前橋さんのことはもちろん存じ上げていましたが、なんとなく 近寄りがたい、雲の上の存在、孤高のバイオリニスト、という勝手なイメージを作り上げていました。でも、彼女の受け答えを聞いているうち、だんだん彼女の人となりがわかり、親しみさえ感じ、さらに 大ファンになってしまいました。彼女の演奏はそんなに聞いたことがなかったのにです。インタビュアーのかなりぶしつけな質問にも、大人の余裕でもって受け答えし、
流されず、媚びず、凛とした自我を印象付けておられました。あくる朝、私は迷うことなく彼女の50周年記念CDを買い求めるべく、オーダーしました。彼女に演奏は素晴らしく,感動的でした。一日一回は聞いています。
斎藤秀雄 講義録
サイトウキネンは知っているけれど、小澤征爾さんも知っているけれど、
いったい齋藤秀雄先生ってどんな教えをされていた方なんだろう・・と
ずーっと長年知りたくてたまりませんでした。
そんな人には、ほんとに目から鱗の本です。
バッハの解釈も、モーツァルトやベートーヴェンの解釈も、その時代にはこんな流れもあったから、ベートーヴェンはこうしたんだよ。モーツァルトは「洒落」
ロマン派を経験して今がある・・だから現代の解釈というものは、このような解釈であって良いのだということが、
大きな裏づけと共にいっぱい書いてあります。
クレッシェンドだけでも、このような種類があり、そのようなことを箱根の山にたとえていらっしゃる。
曲の展開の仕方、メロディのフレーズの考え方も、非常にわかりやすい例えが書いてあって、これがヒントだよ。あとは自分でやってごらん!とやさしく言われているように感じます。
この本は、とてもわかりやすく、編集に関わったメンバーをご覧になればわかる通り、先生の言葉に忠実にやさしく書かれてあります。
この本を読めば、音楽理論の大学の授業は要らない・・
こんなに楽しい授業を受けてみたい!自分自身も齋藤先生の講義を受けている気持ちになってしまうほど、虜になりますよ!