真夜中への挨拶 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
「死者との対話」「死の笑話集」に続く時間が描かれていて、訳者あとがきによれば、三部作をなしているそうです。
でも、前二作とは、直接ストーリー的にはつながっていません。
いつも通りの大作ですが、一気に読めてしまいました。(夏休みの楽しみにガンガン読みました。)
私の好きなボウラー刑事が少し不思議ちゃんにはなっているものの、元気を取り戻しつつあり、うれしく思いました。
膨大な中部ヨークシャーサーガを綿々と読んでいないと、わけのわからないところもあり、マニアにはたまりませんな。
田部京子ベスト~CDデビュー10周年記念盤
有名な小品を寄せ集めたアルバムがあるが、これはそれとは似て非なるもの。
もっと個人的で親密で、「濃密な音楽時間」にいざなってくれる。
「音を沈黙と測りあえる」ピアニストならではの選曲。
自選された全18曲のそれぞれに、奏者自身のコメントが付いている。
1曲目:グリーグ「アリエッタ」
「わずか23小節のさりげない小品。30余年にもわたって気の向くままに書きつづった、
グリーグの音楽随想集ともいえる<抒情小曲集>の第1曲にあたる。
美しいメロディが、繰り返し静かに歌われるというごくシンプルな曲であるが、
弾く度に初めて触れたような新鮮な感覚にさせられる曲」とある。
この1曲目から彼女が作り出す音楽世界に引き込まれる。
3曲目、メンデルスゾーン無言歌集「ヴェニスのゴンドラ」。”行間を読む”という言葉があるが、
この曲を弾く彼女のピアノを聴いていると、思わず、音と音の間に広がる沈黙に、耳を澄ます。
4曲目、軽快に指がまわるメンデルスゾーン「紡ぎ歌」の後に響く、シューマン「子供の情景」、その美音と情感。
続いて奏でられるワーグナーの「夕星の歌」。リストが編曲したタンホイザーの抒情世界。
この曲を聴くだけでも、このアルバムを入手する価値があると、書きたくなるが、
そんな演奏が、まだ何曲も収録されている。
ある時は、彼女が独りピアノを弾く部屋の角に立ち、静かにそれを聴いているような気分になり、
ある時は、ぐっとピアノに近づいて華麗で迫力のある音の流れに身をひたす。
1曲1曲が充実しているので、BGMというよりは、じっくり耳を澄ます音楽体験になる。
余談だが、ジャケットが「のだめ」23巻カバーに似ているのは偶然か。CD本体はきれいな薄桃色。