ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)
「ラギッド・ガール」は「グラン・ヴァカンス」を補完する中編集。3部作中2作目にあたります。
仮想世界誕生秘話から現実世界との断絶原因、そして謎の敵の誕生についてと、「グラン・ヴァカンス」で語られなかった謎が5つの中篇になっています。ここでも複線が解かれる快感、驚きが満ちています。現実世界を舞台にした物語が含まれているため、グラン・ヴァカンスにあった幻想的繊細さでは無く、リアルな空気感、タイトルの通りラギッドな読後感があります。
両作品とも、登場人物が虐殺され陵辱されるシーンは、執拗なまでにグロいのですが、それでも読み進められたのは内心登場人物が人間では無い=AIという仮想的な存在という意識が頭にあったからかも知れません。不思議なもんですね。
第3部がいつ刊行されるのかわかりませんが、残っている謎(天使とか、ジュールのその後とか)が明らかになるのか、楽しみでたまりません。待ち遠しいです。
グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
雰囲気のある文体で筆者自身をもって「清新であること、
残酷であること、美しくあること」に終始したと言う言葉
に恥じない文章と内容だった。
特に「ランゴーニ」のキャラ造詣が良く印象的だった。
登場他キャラを全てにおいて押しつぶして行く様は大変清清しい
話の前後を想像させる構成で、是非続編を読んでみたい
ものです。
象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)
以下の4つの短編が収録された短編集です。
1.デュオ:113頁
2.呪界のほとり: 48頁
3.夜と泥の:73頁
4.象どられた力:168頁
共通するテーマは、肉体という器に依存しない生命の存在。
幽霊とか霊などではなく、精霊や神でもないが、形を持たない生命の存在を提示しているテーマ性の強い作品である。
(デュオ)
舞台は現代の地球。主人公は、ピアニスト。推理小説のような展開で物語は進む。
(呪界のほとり)
舞台は遥か未来の、遠い星。呪界といわれる空間になっている星界の中心部を、瞬間移動するために開発された竜を連れた主人公が、呪界を外れて遭難したところから始まる物語。
(夜と泥の)
舞台は、遥か未来の殖民惑星。何十年ぶりかに再会した親友二人が、満月の夜に不思議な現象の見物に出かける。二人がそこで見たものは、
(象どられた力)
舞台は、遥か未来の3つの惑星からなる星系。形あるものを作るために必要なエネルギーを得て、形そのものが力ある存在として機能する世界。そんな世界が、形に翻弄される。