悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記 (集英社文庫)
「ユーゴスラビアサッカー戦記」とあるのだが、ただの観戦記ではない。文字通り「戦記」である。この作品に書かれているのは、サッカーを通じてあぶりされる内戦後のユーゴの生々しく深刻な民族の対立と悲劇である。
著者は、連邦を構成する共和国の独立に始まる旧ユーゴ崩壊とそれに続く内戦によってユーゴがどうなったのかを知ろうと、サッカーにかかわるあらゆる民族の人達に会い話を聞く。危険を顧みずにあらゆる場所に赴き取材を試みる。そして、取材中には怒り、悲しみ、喜び、笑いの感情をあらわにするのだが、そこから導き出される考えや結論はあくまで冷静であり中立である。
著者は「どの民族もいい奴ばかりなのにどうしてこんなことになってしまうんだ」と嘆く。内戦が残した対立は最早個人的な感情ではどうにもならなくなっているのである。
そして「絶対的な悪者は生まれない。絶対的な悪者は作られるのだ」と主張する。ここでいう悪者は各共和国の独立を阻もうと軍事介入を起こしたセルビアのことである。悪者を作ったのはアメリカを中心とする世界のことを指しているが、日本も含まれる。そしてメディアも含まれる。
ヨーロッパの火薬庫と称されるユーゴの民族問題は歴史も長く根も深い。それを第三者がエゴをむき出しにして力づくで解決しても傷は深くなるだけである。現在、ユーゴ内戦の評価は隠された事実の発覚などもあり全ての非がセルビアにあるとは言えなくなってはいる。が、残った傷はあまりにも深い。介入した国々の罪は重い。
著者がユーゴに魅せられたきっかけはピクシーでありユーゴサッカーである。それなのに、私が何冊か読んだ専門家によって書かれたものより、内戦の現実が伝わってく�る。当時世界から見放されたユーゴ代表チームがどのように戦っていたのかがリアルに伝わると同時に、内戦後のユーゴの現実を生々しく伝える優れた作品である。
ザ・レジェンド オブ ストイコビッチ [DVD]
名古屋グランパスファンの私はこのDVDを冷静な目で見れない。
特に2回目の天皇杯決勝におけるディフェンダー3人+GKを
全部フェイントでひっくり返しゴールを決めた場面だけで、どんぶり飯
3杯はいけてしまう私としては。
まあ、今から見るとよくこんなテクニックもった一流選手があんなに
長くJリーグでプレイしてくれていたよなという感謝しか浮かんでこない。
でもこの人とベンゲルのおかげでグランパスファンは過去を遠い目で
見てしまうことが多くなり、個人的には複雑な気持ち。
内容はファンじゃなくても十分楽しめます。サッカーとはこんなに楽しく
また美しいものだということが堪能できると思います。
引き裂かれたイレブン~オシムの涙~ [DVD]
この作品のテーマは、民族・戦争・サッカーであり、オシムを中心に作られた物ではない。だから、それを期待して観ると物足りないと感じてしまうかもしれない。しかし、サッカーファンには非常に見応えのある作品に仕上がっていると思う。
私が一番印象に残ったのは、オランダとの親善試合で、ユーゴ国歌斉唱の時に見せたピクシーの笑顔だ。それを見て私は、悲しい気持ちになった。矛盾している様に思えるかもしれないが、映像を見れば、理解してもらえると思う。
ドラガン・ストイコビッチ完全読本 Finale Dragan Stojkovic
はじめ漫画が多用されているので、ちょっと斜めから見ていましたが。
子供(小6)用に買って漫画の部分も目を通しました。
そして自分の持っていた先入観は吹っ飛びました。
木村元彦さん監修の漫画で、誇り、悪者見参の要点をうまく漫画にして旧ユーゴの情勢について若年者も入りやすい1冊です。
PR戦で一方的に負けたセルビアを普通の記者とは違った目線で見て、うまく表現されています。
もちろんピクシー自身についての記載はいいデータベースになります。
誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)
かつてユーゴスラビア代表として活躍し、Jリーグ名古屋で現役を終えたストイコビッチのサッカー半生記。セルビア・モンテネグロサッカー協会の会長を経て、現在は鈴木隆行が在籍しているレッドスター・ベオグラードの会長を務めています。
優れたサッカー選手としてだけではなく、ユーゴ内乱という激動の時代に代表チームの精神的支柱としてもキャプテンシーを発揮する姿が描かれていますが、偏狭なナショナリズムではなく本当に心の底から祖国を愛する姿にその偉大さをつくづく再認識しました。