コレステロール治療の常識と非常識 角川SSC新書 (SSC新書)
日本動脈硬化学会は心筋梗塞の予防、日本脂質栄養学会は長寿を、それぞれ目的としているものが違うので議論がかみ合うことはないと思います。最近、コレステロールの嘘とプロパガンダ、コレステロールの欺瞞などを読みました。草しか食べない兎に動物性のコレステロールを食べさせて作った動脈硬化にどのような意味があるのでしょう。そして、他の動物では成功していないとか。フラミンガムスタディはコレステロール仮説を推進する人が中心に検証したもので、最近否定的なデータも公開されているとか。そのコレステロール仮説の提唱者であるキーズ博士自身が「道を誤っていたかもしれない」と述懐されているとか。心筋梗塞を起こした血管の組成分析ではコレステロールは1%にか過ぎないとか。色々書かれていました。スタチンが有用な薬とすれば、心筋梗塞の発症率が何%低下したという表現よりも、心筋梗塞一人を予防するためには何人に投与する必要があるというほうが説得力があると思います。比重で分類したコレステロールがどのようにして動脈硬化を起こすのかは、私たちには難しすぎて理解できませんし、本当かどうかも検証出来ません。結局、冠動脈疾患の予防も大切とは思いますが、それは総死亡の一部に過ぎないので、総死亡率(長生き)を目安にした基準の方が理解し易いです。コレステロールの高い人は、それぞれの価値観によってスタチンを服用するかどうかを決めるしかないようです。また、著者は利益相反をある程度容認しているようですが、これは試験結果に重大な結果を引き起こしていることは、沢山の事例が照明しており、ある本によると2004年以後の試験では、スタチンの有用性は否定的なようです。
参考文献が巻末に載っていれば、それぞれの著書の中で出てくる著者の論文にたいする評価を対比できるので、もっと良かったと思います。