吾輩は猫である [VHS]
大衆娯楽とは対極にある、極めて芸術性の高い映画。だいぶん表現手法は違うが日本版フランス、ヌーベルバーグというべき印象、無機的であり、知的でユーモラス、俗っぽさも満載で、人生の喜怒哀楽、人とは何かという問いかけが全てがつまっている傑作。芸術を作ろうと思う側の人間ならば、かならず繰り返し見るべき、面白いとか面白くないとかいうそんな低次元の映画ではありません。・・・私が今まで見た回数は数えきれません。
KEIGO III~歌うように話せたら
アルバムタイトルとなっている「歌うように話せたら」は名曲。
仲代圭吾・行代美都の両氏はTVではなく、コンサート中心に活動をしている
シャンソン歌手だが、シャンソンだけではなく、オリジナルや世界の名曲もコンサートに取り入れている。
CDには、オリジナル・シャンソンが中心となるが、彼らの良さは、実際のコンサートの方がよく伝わる。
なんと言ってもMCが最高なのだ。
また、実兄仲代達矢氏の詩の朗読がいい。
情景が目に浮かび実にいい。
コンサートでは、達矢氏がマイクを持ち、シャンソンを歌う。これもまた見物である。
遺し書き―仲代達矢自伝 (中公文庫)
駅の本屋さんで見つけて移動中の暇つぶしに買ったのですが、
新幹線の中で涙が止まらなくなって困りました。
仲代さんは、日本人離れしたルックスで渋い演技をする大御所 というイメージしか持っていなくて、
このような生い立ちをもって、このような素敵な奥さんとの人生をおくられた
すばらしい人だったんだなあと改めて注目です。
特に奥さんのお話は、最近のモンスターペアレンツとは同じ人間だと思えないし(つめの垢をせんじて飲ませるというより
そもそも良さが理解できないでしょう。読書している間も後ろの座席で子供がキーキー金切り声を上げ、親は注意もせずにビールを飲んでいました)
ある程度年配のいわゆる できた奥さん でもこんなにすごい人はいないのではないでしょうか。
何度も生まれ変わってきた仲代さんの運命の人なんだなあと思ってしまうくらい素敵です。
筆者も作家を志したこともあるというくらいの人ですから、文章の力もあるとは思うのですが、つくづく美しい人です。
買ってよかったし、キオスクの人の選択眼にも感謝です。
切腹 [DVD]
思えば60年代は日本の時代劇の黄金時代であった。世に名高い「用心棒」「椿三十郎」「赤ひげ」の黒沢三作品だけでなく、名作、傑作が多い。小林正樹監督の「切腹」も「拝領妻始末」に並ぶシリアス時代劇の傑作といえる。小林監督の作品はそのあまりのリアルさゆえに娯楽性にやや欠け、人気では黒沢作品には劣るが、内容的には凄みのある重苦しいほどの迫力を持つ。私は圧倒的なリアリティをもつこの作品が大好きだ。脚本は橋本忍、キャスティングも素晴らしい。娘婿の敵を討つために単身井伊藩屋敷に乗り込む津雲半四朗に仲代達矢、老獪な家老に三国連太郎、この二人の演技が素晴らしい。制作時仲代が30歳、三国が41歳というから驚く。演技力もさることながら圧倒的な存在感だ。現在を基準に考えると信じられない思いがする。物語は胃がぎりぎりするほど重苦しく、緊迫した展開をする。死を覚悟して娘婿の仇討ちに単身井伊藩屋敷に乗り込み、老獪な家老に対峙する。二人のやり取りが見物だ。「武士道残酷物語」ともいえるが、見る側を最後まで緊張させる。リアル時代劇の最高傑作のひとつに違いない。これまでビデオしかもっていなかったが、廉価版がでたのでようやくDVDを購入。久しぶりにきれいな画像で観た。最近はビデオで観るのが辛い。しかし、日本映画の旧作DVDは高すぎる。数がでないから売値を高くしているのだろうけど、値段がこなれればDVDに切り替える人も多いのでは。こうしたDVD化を多く望みたい。