この命、義に捧ぐ~台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡~
個人的に著者の門田氏を存知上げており、この知られざる日本人将軍・根本博のお話は刊行以前にお聞きしたことがある。
受けた恩義を返そうとする意志を決して曲げず、誰よりも邦人を思い、時代の潮流に逆らってでも行動することができた根本将軍。
知ることを誇りに思え、知らなかったことを悔いた人物であった。本作品は、その時の思いを一層深くするに値するものだ。
1949年10月25日、古寧島戦没は蒋介石率いる国民党軍が、毛沢東率いる共産党軍に勝利した最後の戦いである。この事実は周知のものだ。
しかし勝利に導いた力ある日本人がいたこと、又それを成し遂げる為に共に命を懸けた人間の存在を私達は知らない。いや、知ろうとも
しないのだ。
「無からのスタート」。本作品にはこの言葉が最もふさわしいと思っている。第一章、根本将軍はたった一つの小さな釣り船で台湾へと
漕ぎ出した。あるのは、天皇制と邦人の命を守ってくれた蒋介石に何としても恩義を返したいという使命感だけだった。
著者の門田氏も又、常に事実とされている出来事に対して、敢えて立ち返り時には疑う視点を持つことから根本博のような人物と出会う
に至るのだと言われた。こちらもまさに、書き手としての使命感だろう。
『この命、義に捧ぐ』は、60年前の将軍の使命感を現代に生きる著者が掘り起し、証明した運命的な一冊なのである。