平成三十年 (上) (朝日文庫)
構造改革が叫ばれる現在であるが、では、「改革」を行わず、「何もしなかった」ら、どんな未来が日本に待っているかを描いた予測小説である。この小説は、小説という読みやすくわかりやすい形を取ることによって、現代日本が抱える問題点と対立軸を炙り出すことに成功している。そして、その未来は、決して明るいものではない。自分ならこの平成30年をどう生きるか、何をしているのか、思わず考えてしまう。
この本には、もう一つの楽しみ方がある。歴史小説のマニアなら、思わず微笑む遊びがされている。主人公の名前が戦国時代末期の武将や豪商のそれから取られているが、それだけではない。細かいエピソードやセリフが、歴史小説マニアなら「わかる」しかけが施されているのだ。改革者織田信長が意識されているのは誰でもわかるとして、松永弾正の動きなどは、思わず笑ってしまった。読み返して、作者の仕掛けを見つけるのが楽しみである。でも、「初芽」は誰なのだろう?
この本には、もう一つの楽しみ方がある。歴史小説のマニアなら、思わず微笑む遊びがされている。主人公の名前が戦国時代末期の武将や豪商のそれから取られているが、それだけではない。細かいエピソードやセリフが、歴史小説マニアなら「わかる」しかけが施されているのだ。改革者織田信長が意識されているのは誰でもわかるとして、松永弾正の動きなどは、思わず笑ってしまった。読み返して、作者の仕掛けを見つけるのが楽しみである。でも、「初芽」は誰なのだろう?
峠の群像 [DVD]
当時、最終回を見逃した悔しさを ようやく払拭することができました。
残念ながら、完全版は残っていないようで 総集編でしたが、時代のひずみにのみ込まれていった人々の想いを感じることができました。
残念ながら、完全版は残っていないようで 総集編でしたが、時代のひずみにのみ込まれていった人々の想いを感じることができました。
戦国時代の組織戦略
私の日本史探訪は昭和史から始めて明治、幕末、徳川三百年と来たが、ここらでその前の
戦国時代に目を向けようと思っていた矢先、この出版を知った。NHKの連続TVドラマでたび
たび取り上げられる戦国時代の武将達、やはりドラマ性のある人達なのだろう。元経済企画
庁長官の著者堺屋先生は、ザックリこの時代の社会変革について語ってくれる。
著者は1477年の応仁の乱終焉から1600年の関ヶ原の戦いまでの約120年を戦国時代と
捉える。丁度この期間、西洋ではルネッサンスに突入し、科学技術の発明・発展、大航海時
代の最中で貿易の拡大、キリスト教の布教、都市国家間の利害闘争等に日本も少なからず
影響を受けるのだ。足利時代の古い秩序から新しい秩序を求めて死に物狂いで戦う群像の
120年だ。このような時代を生き残るために、技術革新が進み農業の生産性も向上し、鉄砲
の保有量も一部西洋の国を上回り、この期間に人口は倍増し、GDPは3倍になった、と著者
は言っている。
この本の大半はこの時代を形成した二人の英雄、織田信長と豊臣秀吉の政策論、人事を
含めた組織論にさかれている。尾張の田舎家老の三男として生まれた、信長の出自は決し
て華々しいものではなかった。が、これが逆に普通の事をやっていてもダメだという意識改革
の原点なのだろう。その第一がカネを使って兵士を集める(従来は基本的に領地の農民兵)
というものだ。カネを稼ぐために楽市楽座制度を設けて、従来の商業組合を廃して自由市場
で流通の発展を計る。商業組合を庇護して武装集団化した寺社を弾圧する。改革に大変な
抵抗を伴い、本願寺焼き討ちや一向一揆など大騒ぎだ。結局今でも謎が残る明智光秀の本
能寺の変で49歳の一生を終える。
信長の跡を継いだ豊臣秀吉の、その才覚(力と駆け引きのバランス)による拡大政策の結
果は目覚しい。戦国時代に限らず、日本の歴史の中では、秀吉のようにゼロから出発して一
代にして天下を制した例はほかに見当たらない。いや、世界の歴史の中でも、これに匹敵す
るほどの大成長は、漢の高祖・劉邦、モンゴルのジンギス汗、明の太祖・朱元璋・フランスの
ナポレオンなど五指を数える程度だと、著者は言っている。秀吉の様々な成長の過程が述べ
られているが、著者が特筆しているのは、補佐役としての実弟秀長の存在だ。いかなる時に
も自分の勲功を主張せず、調整役に徹して味方を増やす。そんな秀長が秀吉に先立って死
んでしまってから、天下人も乱れてくる。二回に亘る朝鮮出兵の大失敗。
このあと、組織の中の参謀の役割として、TVドラマ放映中の黒田官兵衛の活動が述べられ
ている。政略参謀としては黒田に先立ち竹中半兵衛が居たが合戦中に戦死、また文化参謀
としての千利休は官僚達の板挟みで切腹。参謀は組織の中では割に合わない仕事らしい。
終わって見れば、徳川家康の掲げた「欣求浄土(身分秩序の決まった封建社会)」に落ち着
くのだ。 以 上
戦国時代に目を向けようと思っていた矢先、この出版を知った。NHKの連続TVドラマでたび
たび取り上げられる戦国時代の武将達、やはりドラマ性のある人達なのだろう。元経済企画
庁長官の著者堺屋先生は、ザックリこの時代の社会変革について語ってくれる。
著者は1477年の応仁の乱終焉から1600年の関ヶ原の戦いまでの約120年を戦国時代と
捉える。丁度この期間、西洋ではルネッサンスに突入し、科学技術の発明・発展、大航海時
代の最中で貿易の拡大、キリスト教の布教、都市国家間の利害闘争等に日本も少なからず
影響を受けるのだ。足利時代の古い秩序から新しい秩序を求めて死に物狂いで戦う群像の
120年だ。このような時代を生き残るために、技術革新が進み農業の生産性も向上し、鉄砲
の保有量も一部西洋の国を上回り、この期間に人口は倍増し、GDPは3倍になった、と著者
は言っている。
この本の大半はこの時代を形成した二人の英雄、織田信長と豊臣秀吉の政策論、人事を
含めた組織論にさかれている。尾張の田舎家老の三男として生まれた、信長の出自は決し
て華々しいものではなかった。が、これが逆に普通の事をやっていてもダメだという意識改革
の原点なのだろう。その第一がカネを使って兵士を集める(従来は基本的に領地の農民兵)
というものだ。カネを稼ぐために楽市楽座制度を設けて、従来の商業組合を廃して自由市場
で流通の発展を計る。商業組合を庇護して武装集団化した寺社を弾圧する。改革に大変な
抵抗を伴い、本願寺焼き討ちや一向一揆など大騒ぎだ。結局今でも謎が残る明智光秀の本
能寺の変で49歳の一生を終える。
信長の跡を継いだ豊臣秀吉の、その才覚(力と駆け引きのバランス)による拡大政策の結
果は目覚しい。戦国時代に限らず、日本の歴史の中では、秀吉のようにゼロから出発して一
代にして天下を制した例はほかに見当たらない。いや、世界の歴史の中でも、これに匹敵す
るほどの大成長は、漢の高祖・劉邦、モンゴルのジンギス汗、明の太祖・朱元璋・フランスの
ナポレオンなど五指を数える程度だと、著者は言っている。秀吉の様々な成長の過程が述べ
られているが、著者が特筆しているのは、補佐役としての実弟秀長の存在だ。いかなる時に
も自分の勲功を主張せず、調整役に徹して味方を増やす。そんな秀長が秀吉に先立って死
んでしまってから、天下人も乱れてくる。二回に亘る朝鮮出兵の大失敗。
このあと、組織の中の参謀の役割として、TVドラマ放映中の黒田官兵衛の活動が述べられ
ている。政略参謀としては黒田に先立ち竹中半兵衛が居たが合戦中に戦死、また文化参謀
としての千利休は官僚達の板挟みで切腹。参謀は組織の中では割に合わない仕事らしい。
終わって見れば、徳川家康の掲げた「欣求浄土(身分秩序の決まった封建社会)」に落ち着
くのだ。 以 上