党生活者
小林多喜二の描く共産党員の非合法な生活。共産主義自体が禁止されていない現代ではなかなか想像しがたい当時の空気感のようなものがひしひしと伝わってきた。小説とはいえ彼の実体験に基づいた話であり、リアリティのある描写が印象的だ。1930年代の日本で共産党員として活動するということがどういうことか、これを読めばよく分かる。地下に潜る自分を心配してくれる母親の様子を気にかけつつも、自身の思い描く理想のために犠牲を顧みない主人公。彼の想いに触れ、100年ほど前にはこのような考えを持っていた人がこの日本にいたのか、と考えさせられた。共産主義という思想が古びて聞こえる今だからこそ、そこから少し離れたところから当時の活動を見てみると学ぶことも多いのではないか。
蟹工船
「蟹工船」というタイトルは歴史の授業で一度は聞いたことがあると思います。プロレタリア文学の代表作として複数の出版社から出版され、最近ではワーキングプアなどの問題からブームが再燃してますが、こちらではブームの火付け役であり、ワーキングプア、プレカリアートの問題で活躍している雨宮処凛先生の解説が付いてます。
実際に読む以前の「蟹工船」の認識は、戦前の労働現場の悲惨さを書いたものという程度で、読んだら鬱になると思ってましたが、悲惨さの他に希望もあるというので読んでみました。
作中では予想した通り、労働者が蟹工船内の劣悪な環境でこき使われた挙げ句、死ぬと水葬、つまり海に投げ捨てられるという、地獄のような有様ですが、そんな中で労働者たちが団結して会社側の監督たちに対抗し、ラストではささやかな勝利を収めるという話で、確かに希望はありますね。
けど、この本は本編が終わったら、更に雨宮先生ともう一人による解説がありまして、解説とは言ってもブームの火付け役によるものですからもう一つの目玉と言っていいでしょう。こちらでは戦前の「蟹工船」と、現代のワーキングプアなどの問題との対比について様々な実例を交えて書いてあります。これらを見ると、「蟹工船」は未だに過去の話ではないのだとつくづく思い知らされます。
実際に読む以前の「蟹工船」の認識は、戦前の労働現場の悲惨さを書いたものという程度で、読んだら鬱になると思ってましたが、悲惨さの他に希望もあるというので読んでみました。
作中では予想した通り、労働者が蟹工船内の劣悪な環境でこき使われた挙げ句、死ぬと水葬、つまり海に投げ捨てられるという、地獄のような有様ですが、そんな中で労働者たちが団結して会社側の監督たちに対抗し、ラストではささやかな勝利を収めるという話で、確かに希望はありますね。
けど、この本は本編が終わったら、更に雨宮先生ともう一人による解説がありまして、解説とは言ってもブームの火付け役によるものですからもう一つの目玉と言っていいでしょう。こちらでは戦前の「蟹工船」と、現代のワーキングプアなどの問題との対比について様々な実例を交えて書いてあります。これらを見ると、「蟹工船」は未だに過去の話ではないのだとつくづく思い知らされます。
蟹工船・党生活者 (新潮文庫)
最近、蟹工船が若者の間で人気が高いということを聞いて再読いたしました。
果たして、以前読んだときに気がつかなかったのは、作品に込められた「希望」でした。
小林多喜二は非業の最期を遂げますが、穏やかで朗らかな人であったといいます。
彼は心底、社会の不条理に向き合い、そしてそれを克服してゆく理想を抱いた人であったのだと思いました。
蟹工船・党生活者の2編が読めますが、この作品を公表したならば自らの運命がどのように進んでいくか自ずとわかっていたはずだと思います。
小林多喜二は勇気をもって、世の中の人に希望を届けようとしたのでしょう。
それは死と引き換えであったのだと思いました。
時代は違って、銃を向けられるようなことはありませんが、過重労働の現場は今も多く残されていますし、国際競争の名の下に、労働現場が厳しさを増している状況を、蟹工船の人気が示しているのでしょう。
再び、小林多喜二の希望が必要な時代がやってきたということでしょうか。
果たして、以前読んだときに気がつかなかったのは、作品に込められた「希望」でした。
小林多喜二は非業の最期を遂げますが、穏やかで朗らかな人であったといいます。
彼は心底、社会の不条理に向き合い、そしてそれを克服してゆく理想を抱いた人であったのだと思いました。
蟹工船・党生活者の2編が読めますが、この作品を公表したならば自らの運命がどのように進んでいくか自ずとわかっていたはずだと思います。
小林多喜二は勇気をもって、世の中の人に希望を届けようとしたのでしょう。
それは死と引き換えであったのだと思いました。
時代は違って、銃を向けられるようなことはありませんが、過重労働の現場は今も多く残されていますし、国際競争の名の下に、労働現場が厳しさを増している状況を、蟹工船の人気が示しているのでしょう。
再び、小林多喜二の希望が必要な時代がやってきたということでしょうか。
組曲虐殺 [DVD]
井上ひさしさんの遺作です。一時期ブームになった「蟹工船」を書いた小林多喜二さんのことを描いた作品で、
多喜二の生きた時代には、一部の人間にこんな酷いことが行われていたのか、と驚かされます。
多喜二役の井上芳雄さんはミュージカル俳優という印象が強かったのですが、
この役ではどんなに迫害されても思いを貫く多喜二の精神の強さを演じていてすばらしい。歌もさすがです。
舞台作品を映像で見るのはあまり好まないのですが、
いい台詞がたくさんあるので、何回も繰り返して心に染ませたいです。
多喜二の生きた時代には、一部の人間にこんな酷いことが行われていたのか、と驚かされます。
多喜二役の井上芳雄さんはミュージカル俳優という印象が強かったのですが、
この役ではどんなに迫害されても思いを貫く多喜二の精神の強さを演じていてすばらしい。歌もさすがです。
舞台作品を映像で見るのはあまり好まないのですが、
いい台詞がたくさんあるので、何回も繰り返して心に染ませたいです。