サムライたちのメキシコ―漫画 メキシコ榎本殖民史
旅行先のメキシコで何の気なしに手に取って読んだが、とても面白かった。
本書は、メキシコ榎本殖民―榎本武揚の理想と現実 (中公新書)を漫画化したものだが、その内容は明治時代、メキシコに移住した開拓移民たちの苦闘とメキシコ社会との交流を描いたものである。移住した人々が、高い理想をもち、度重なる逆境にも屈せずに新天地で新たな生活基盤を築き、現地の人々の生活の向上に貢献したのも立派だが、特に立派だと思うのは、メキシコが革命で混乱し、移民たちが苦労して築いた財産が失われた際、現地の人々と苦難を分かち合おうという精神から、メキシコ政府による損害賠償を謝絶したことだ。そのことがメキシコ人の日本人への信頼の基礎になった。国際関係というものは、経済や安全保障など、マクロの利害で動くと考えられがちだが、こうした個々人の行動があって日本への信頼や親近感がはぐくまれてきている、ということを忘れてはならないだろう。
榎本殖民団と同時期にアメリカに渡った内村鑑三は余は如何にして基督信徒となりし乎 (岩波文庫 青 119-2)のなかでう書いている。「外国に出ると、人間は単なる個人以上のものになる。彼は自分の国や人種を代表する存在になるのだ。彼の言動は単なる個人の言動ではなく、彼の国、彼の人種のものとして見られるようになる。だから、外国に旅する人は、すべてその国の全権大使となり、外に向かって自国を代表することになる。高い責任感ほど人間をしっかりさせるものはない。自分の行動が卑劣か高潔かによって、自分の国が非難されたり称賛されたりすることを知るとき、ひとは悪ふざけやおべっか、軽はずみな言動を慎むようになるものだ。」メキシコに渡ったサムライたちも、きっと同じ思いで苦難に耐え、後世の日本人のために高潔な行動を貫いたのだろう。
いったい、自分を含め、今日の日本人は彼らのように高潔で立派な生き方をしているだろうか。本書を読む人は、そう自問せずにはいられないだろう。
本書は、メキシコ榎本殖民―榎本武揚の理想と現実 (中公新書)を漫画化したものだが、その内容は明治時代、メキシコに移住した開拓移民たちの苦闘とメキシコ社会との交流を描いたものである。移住した人々が、高い理想をもち、度重なる逆境にも屈せずに新天地で新たな生活基盤を築き、現地の人々の生活の向上に貢献したのも立派だが、特に立派だと思うのは、メキシコが革命で混乱し、移民たちが苦労して築いた財産が失われた際、現地の人々と苦難を分かち合おうという精神から、メキシコ政府による損害賠償を謝絶したことだ。そのことがメキシコ人の日本人への信頼の基礎になった。国際関係というものは、経済や安全保障など、マクロの利害で動くと考えられがちだが、こうした個々人の行動があって日本への信頼や親近感がはぐくまれてきている、ということを忘れてはならないだろう。
榎本殖民団と同時期にアメリカに渡った内村鑑三は余は如何にして基督信徒となりし乎 (岩波文庫 青 119-2)のなかでう書いている。「外国に出ると、人間は単なる個人以上のものになる。彼は自分の国や人種を代表する存在になるのだ。彼の言動は単なる個人の言動ではなく、彼の国、彼の人種のものとして見られるようになる。だから、外国に旅する人は、すべてその国の全権大使となり、外に向かって自国を代表することになる。高い責任感ほど人間をしっかりさせるものはない。自分の行動が卑劣か高潔かによって、自分の国が非難されたり称賛されたりすることを知るとき、ひとは悪ふざけやおべっか、軽はずみな言動を慎むようになるものだ。」メキシコに渡ったサムライたちも、きっと同じ思いで苦難に耐え、後世の日本人のために高潔な行動を貫いたのだろう。
いったい、自分を含め、今日の日本人は彼らのように高潔で立派な生き方をしているだろうか。本書を読む人は、そう自問せずにはいられないだろう。