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鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST -暁の王子-
軍事国家アメストリスに南の隣国アエルゴから講和の使者「暁の王子」が訪れた。錬金術師兄弟のエド(兄)はイベントに参加して大暴れ、アル(弟)は少女と知り合い街を案内する。だが平和な街の裏では不穏な動きが……。

荒川弘『鋼の錬金術師』を原作とするアクションアドベンチャーです。物語は原作16巻につながるオリジナル。声優やアニメパートは2009-2010年のアニメに準拠しています。

本作『暁の王子』と続編『黄昏の少女』は上下巻になっています。全14話構成で、本作は1話から7話まで、続編は8話から最終14話までを収録しています。1話終了毎にアニメ番組風の「次回予告」が挟まれます。

必要最小限の操作のみ行い、ミッションを全て1回で成功させれば、上下巻の合計でエンディングまで10時間を要しません。しかし物語の本筋を追うだけならゲームである意味がない。本作は「もしこんな選択をしたら……」「この場面でこの人に話しかけたら……」といったifにフルボイスで応えており、ゲームならではの楽しみを追求しています。

「正解」のみ求めて他の可能性に関心を持たず、物語に影響しない会話などを「無駄」と考える方は、本作をボリューム不足と感じるでしょう。しかし6話の花火イベントで孤独エンドを含む全パターンを見たいと思うような方は、全く逆の感想を抱くはず。本作は膨大な会話パターンを収録しており、一部の脇役はアニメの1年分より本作の方がセリフが多いです。

価格が下がった今なら、上下巻分割でも手に取りやすい。上巻ラスト、ゲームオーバーを承知で、板挟みに悩むホークアイ中尉が決断できない場合の結末を「見たい」と思うような方なら、きっとプレイして損はない作品だと思います。

鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST Original Soundtrack 3
鋼の錬金術師』のために作曲された全3枚のCDを聴いて思ったのは、千住 明が、これからも大きく変化する可能性を秘めた、いまだ「発展途上」にある作曲家であるということであった。
今日、日本では、久石 譲を筆頭にして、岩代 太郎・大島 ミチル・渡辺 俊幸等の映像音楽の作曲家が活躍しているが、正直なところ、それらの作曲家は現段階において既にその個性と能力を完全に発揮しているように思われる。今後、彼等がわれわれを驚かせるような変貌を遂げるようにはあまり思えないのである。
しかし、千住 明の音楽を聴くとき、われわれはそこにさらなる可能性が秘められていることを直感することができる。少なくとも、今回『鋼の錬金術師』のために作曲された音楽は、千住 明という作曲者の将来にわれわれの期待を高めてくれるような実に卓越した作品だと思うのである。
ただし、個人的には、大島 ミチルと千住 明という2人の作曲家により創造された『鋼の錬金術師』を比較すると、大島氏の作品にやや分があると思う。千住氏の場合、音楽を構成するひとつひとつの要素が小さいために、ときとして、音楽そのものが細筆で書いたようなどこか神経質な印象をあたえてしまうことになる。これにたいして、大島氏の音楽は、本能の赴くままに太筆で書いたような思い切りのよさを感じさせるのである。また、それゆえに、大島氏の音楽には、大胆な旋律美が息づいており、それがいい意味での大衆性を生んでいるように思うのである。それと比較すると、千住氏はずっと頭脳明晰であり、その音楽には常に理性の制御がいきとどいている。そして、正にそれゆえに、音楽がそこはかとない線の細さを感じさせてしまうのだろう。
しかし、この『鋼の錬金術師』という作品を聴くと、この作曲家の中には、いまだ十全に発揮されていない「凶暴さ」のようなものが潜在していることを直感することができる。そして、今後、それがその卓越した知性と技術と融合を果たしたときには、この作曲家を真に偉大な存在に高めるのではないかと期待させるのである。
この第3巻であるが、ワルシャワでワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団(Filharmonia Narodowa)と録音した楽曲を中心にして構成されており、第1巻と同様に非常に充実している。純粋に優れた管弦楽曲をたのしみたいというひとには是非推薦したい作品である。
正直なところ、こうした音楽が子供たちを対象としたTVのアニメのために作曲されているということは、正に驚くべきことだと思う。こうした良質の音楽が提供されることが、子供たちの感性にどれほど貴重な滋養をあたえていることだろうか……。

劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 Blu-ray Disc
 原作とはまったく違う展開を見せた TV 版1期の続編にあたる本作。弟アルの人体を錬成した見返りに、別の世界(錬金術は廃れ科学技術の発達した、我々にとっての現実世界)へと飛ばされたエド。1923年ヒトラーによる一揆前夜のミュンヘンで、エドは元の世界へと戻る方途を探しあぐね半ば絶望していた。しかし、そこには錬金術の世界(シャンバラ)に干渉し、その力を利用しようという勢力があり、エドはその陰謀に巻き込まれてゆく。一方、錬金術の世界に残されたアルも、エドを取り戻す方法を模索していた。―― アルとエドは生きて再会できるのか?
 本作はパラレルワールドものの SF としてもなかなかの完成度で、当時の歴史背景を多少知っていれば SF ファンも楽しめるはず。SF 的設定の核 ――「等価交換」の原理を(原作よりはるかに)徹底してみせた物語展開が素晴らしく、沈鬱ながらも力強いラストシーンに、私には珍しく目頭が熱くなってしまった。(沈鬱。映画の素材自体が、史実においても "失敗" した「ミュンヘン一揆」で、この映画のその後は描かれないが、もし史実通りに行けば、おびただしい人間の魂が「等価交換」されることになるはずなのだ・・・・・・。)ほかのレヴューにもあったように、異端かもしれないけれど、わたしも原作よりこっちの物語のほうが好き、いや、ずっと印象深い。
 ああ、もちろん原作ファン向けの細かいサービスシーンも健在で楽しいよ。マスタング大佐の登場シーンに、劇場では黄色い悲鳴が上がっていたという。(というか、これは経験談で、実際すごかったんだよ。もう10年も前か・・・・・・。)

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