『
ひぐらしのなく頃に』という作品は、PC用ノベルゲームとして制作された、雛見沢という鄙びた寒村で発生した(し続けている)事件をモチーフにした、サスペンス調のミステリーです。同じシチュエーションを、少しづつキャラクターのフォーカスを変える形で、幾通りもの切り口から描くという手法が特徴的で、原作者によると「全8編」のストーリーから成立する作品だということです。また、事件の真相が示されず、複数の視点からの物語を読み進めることで、読者自身が真相を推理するというスタイルも新鮮です。
内容的には、鄙びた寒村故の、人と人との濃厚なつながりを、プラスマイナス両面から極端に対比させて描いている点が印象的で、特に信じていたものが崩れ去っていく過程の描写が売り物となっています。
今回全8編中の1〜3編がそれぞれ書き手を変えてコミカライズされたわけですが、ビジュアルを得たことによりこの作品に新たな魅力が加わりそうで、大いに期待しています。
この『祟殺し編』は第3編にあたり、妹的キャラの「北条沙都子」にスポットが当てられます。また、前2編とはある意味正反対の視点からの物語といえると思います。隠されていた伏線も明かされつつありますので、この編は「鬼隠し編」「綿流し編」読了後に読むのが正しいでしょう。ただ、展開が一番遅く、まだまだ本筋に至らず「次巻へ続く」となっている印象がありますので、少々物足りなくも感じましたね。
絵的にも前2編がほぼ同系列の絵柄だったのに対して、明らかに異質です。そのことが評価を分けるかもしれませんが、この"異質"さもまた「ひぐらし」らしさと言えるように思います。
原作者曰く「もっとも痛々しく、生々しいシナリオ」が、どう展開されるのか。期待と不安が入り乱れますね。