東北大学の若手の助教授が、かなり分かりやすくというか、くだける寸前で「歴史学って結構面白いんで一般の方々もよろしく」と腰を低くして語りかけるような良書。啓蒙書でも、学者さんが書くと「オレがオレが」とつまらぬ新説を中心に資料をブチまけるような場合が多いけど、この人の場合は、自分の主張は抑え気味にして、面白歴史本のブックガイドをするような感じで、歴史関係の良書をどんどん紹介しつつ、記述を進めていくのがうれしい。人柄なんだろうか。贔屓にすることに決定。
この本のおかげで、『青き
ドナウの乱痴気―ウィーン1848年』良知 力と『路地裏の大英帝国―イギリス都市生活史』角山 榮ほか編、『動物裁判―西欧中世・正義のコスモス』池上 俊一などを知ることができ、すかさず注文してしまった。こういう、中途半端な古い本を捜そうとすると、昔は神田で半日かけなければならなかったけど、いまじゃ、ユーズド市場からすかさずゲットできるのは本当にありがたい。
内容的には1)歴史学者の仕事はどんなもんなんだろうということを塩野七生さんの『
ローマ人』の仕事を批判しながら紹介していき2)果して歴史の真実というのは確定できるのかという問題を従軍慰安婦問題を通して考えていく―みたいな構成。どちらも、非常にバランスがいいというか、逆にいえば物足りないけど、筆者の「コモンセンスを大切にしたい」という主張もわかる。
なんか、久々に新しいジャンルの本をいろいろ読めそうな気がして嬉しい。ぜひ。