宣戦布告 [DVD]
私がこの作品を知ったのは、現職のある幹部自衛官の方に視聴を勧められた事がきっかけだった。
この作品が製作された当時、警察や自衛隊は、例え十分な戦力や装備を備えた隊員を訓練していても、いざ事が起きてしまった場合、まともにテロリスト相手の対処が出来ないという状況を説明された。映画の中では、まさにそういった展開が映像で表現されている。
今ではテロリスト相手の対応にはより迅速な対応が出来るよう規定が改善されたようだが、この映画が一つのきっかけとなって制度が変わったとも言われるようだ。確かに、戦闘シーンに関してありえない描写が見られるので、そういった点は作りが甘いと言わざるを得ないが、それでも個人的には戦闘シーンも見どころと言えるくらい良く出来ているとも思う。映画で戦闘の描写などは、リアリティーを求め過ぎると、銃を撃つシーンなど、まず発砲の銃声からして実物は相当な音で耳をヤラれてもおかしくないのに、平然と両手に持って連射をかます登場人物の出てくる映画などは数えだしたらキリがないだろう。
原作小説は警視庁の北工作員を捜査する部署が多く描かれており、そちらが主人公と言えるが、本映画版については、警視庁の他に内閣情報官と、前代未聞の危機に直面し、自衛隊を出動させるか否か苦悩する総理大臣、そして自衛隊の運用に際しそれぞれの思惑から現場の作戦行動の妨げとなる政権内部の人間のやり取りが主に描かれている。
作中の個人的に特に印象的なセリフをあげると
「こっちは大事な部下の命を預かってるんだ、指揮官が優柔不断じゃやっていられないんだよ!」
そして
「私の考えで反対している訳ではありません、 ″ 憲法 ″ を申し上げているだけです」
この2つであろうか。現場は大勢の味方が戦死する事態に直面している中、打開策の手段を示し上に求めるも、許可を下す立場の政権内は許可してやりたいものの、2度と戦争をしてはならないという憲法のもとで自国民保護よりも対外的配慮から実力行使を躊躇せざるを得ない状況になる。
最近、韓国に亡命していた北の元工作員が、日本人拉致の際簡単に日本国内へ海から潜入していた事実、海上での漁船を襲撃しての拉致実行、そして日本の原子力発電所へ潜入しての攻撃計画があった事を供述したとする報道があった。もしその計画が事実であり、もしもそれが実行されてしまっていたならば、この映画で描かれている内容は、あながち全くのフィクションとも言えないのである。
ここ最近は尖閣諸島をめぐり隣国のちょっかいの報道も日常になってきた。数日前、かねてより創設の声のあった自衛隊の海兵隊的機能について、本格的に検討されるとの報道があった。島と原発では対処の仕方はまるで違うが、 「災害ではない有事」 が起きてしまった場合、現状で自衛隊が満足に動けるか、この映画を思い出すと改善されているとはいえ、課題はまだまだ山積みのように思う。
このDVDには防衛省は一切協力していないというのが驚きであるくらい、隊員の装備品等の再現度は高く、先に述べたような指摘できる映像の作りこみの甘さはあれども、緊迫した状況での戦闘シーンと、運用する政府内の人間のやり取りは場所の視点が切り替わりながらリアルタイムで進行していき、見ていてストーリーに引き込まれていく。
長らく再販されていなかった為新品での購入は諦め、中古の出物を探すも5000円近い中古DVDにしては高価なものばかりで、状態と値段の納得出来るものを見つけるのを待っている内に、今回の再販を知り、直ぐに予約を行った。
再販の日はすでに参議院選挙も終了しているが、今回の選挙は改憲にTPPや原発をはじめ争点になるものはあるが、国防、自衛隊の今後の運用についても重要な選挙である。どうような結果になるにしろ、この映画については自衛隊がいざという時どのような事を行うのか、また、その命令を出す総理大臣や政府はどのようにそれを決めるのか、現実とは状況は異なるし、結局はこの作品も一つの創作のドラマであるが、より多くの人に国防、防衛について感心、議論についての知識を持ってもらうきっかけにはなるものと思う、是非ともより多くの人に視聴していただきたい作品である。願わくば、地上波の映画番組でも放送してもらえる日が来ることも願う。
この作品が製作された当時、警察や自衛隊は、例え十分な戦力や装備を備えた隊員を訓練していても、いざ事が起きてしまった場合、まともにテロリスト相手の対処が出来ないという状況を説明された。映画の中では、まさにそういった展開が映像で表現されている。
今ではテロリスト相手の対応にはより迅速な対応が出来るよう規定が改善されたようだが、この映画が一つのきっかけとなって制度が変わったとも言われるようだ。確かに、戦闘シーンに関してありえない描写が見られるので、そういった点は作りが甘いと言わざるを得ないが、それでも個人的には戦闘シーンも見どころと言えるくらい良く出来ているとも思う。映画で戦闘の描写などは、リアリティーを求め過ぎると、銃を撃つシーンなど、まず発砲の銃声からして実物は相当な音で耳をヤラれてもおかしくないのに、平然と両手に持って連射をかます登場人物の出てくる映画などは数えだしたらキリがないだろう。
原作小説は警視庁の北工作員を捜査する部署が多く描かれており、そちらが主人公と言えるが、本映画版については、警視庁の他に内閣情報官と、前代未聞の危機に直面し、自衛隊を出動させるか否か苦悩する総理大臣、そして自衛隊の運用に際しそれぞれの思惑から現場の作戦行動の妨げとなる政権内部の人間のやり取りが主に描かれている。
作中の個人的に特に印象的なセリフをあげると
「こっちは大事な部下の命を預かってるんだ、指揮官が優柔不断じゃやっていられないんだよ!」
そして
「私の考えで反対している訳ではありません、 ″ 憲法 ″ を申し上げているだけです」
この2つであろうか。現場は大勢の味方が戦死する事態に直面している中、打開策の手段を示し上に求めるも、許可を下す立場の政権内は許可してやりたいものの、2度と戦争をしてはならないという憲法のもとで自国民保護よりも対外的配慮から実力行使を躊躇せざるを得ない状況になる。
最近、韓国に亡命していた北の元工作員が、日本人拉致の際簡単に日本国内へ海から潜入していた事実、海上での漁船を襲撃しての拉致実行、そして日本の原子力発電所へ潜入しての攻撃計画があった事を供述したとする報道があった。もしその計画が事実であり、もしもそれが実行されてしまっていたならば、この映画で描かれている内容は、あながち全くのフィクションとも言えないのである。
ここ最近は尖閣諸島をめぐり隣国のちょっかいの報道も日常になってきた。数日前、かねてより創設の声のあった自衛隊の海兵隊的機能について、本格的に検討されるとの報道があった。島と原発では対処の仕方はまるで違うが、 「災害ではない有事」 が起きてしまった場合、現状で自衛隊が満足に動けるか、この映画を思い出すと改善されているとはいえ、課題はまだまだ山積みのように思う。
このDVDには防衛省は一切協力していないというのが驚きであるくらい、隊員の装備品等の再現度は高く、先に述べたような指摘できる映像の作りこみの甘さはあれども、緊迫した状況での戦闘シーンと、運用する政府内の人間のやり取りは場所の視点が切り替わりながらリアルタイムで進行していき、見ていてストーリーに引き込まれていく。
長らく再販されていなかった為新品での購入は諦め、中古の出物を探すも5000円近い中古DVDにしては高価なものばかりで、状態と値段の納得出来るものを見つけるのを待っている内に、今回の再販を知り、直ぐに予約を行った。
再販の日はすでに参議院選挙も終了しているが、今回の選挙は改憲にTPPや原発をはじめ争点になるものはあるが、国防、自衛隊の今後の運用についても重要な選挙である。どうような結果になるにしろ、この映画については自衛隊がいざという時どのような事を行うのか、また、その命令を出す総理大臣や政府はどのようにそれを決めるのか、現実とは状況は異なるし、結局はこの作品も一つの創作のドラマであるが、より多くの人に国防、防衛について感心、議論についての知識を持ってもらうきっかけにはなるものと思う、是非ともより多くの人に視聴していただきたい作品である。願わくば、地上波の映画番組でも放送してもらえる日が来ることも願う。
加筆完全版 宣戦布告 下 (講談社文庫)
テレビから北朝鮮の拉致被害者問題のニュースが流れると、「今日は何人の自衛隊が亡くなったのか?」とドキッとしてしまう。これくらい仮想と現実の区別がつきにくいほど現実に考えられる事態を書いています。
構成もテレビ画面を見ているような錯覚に陥るほど場面や状況が刻々と変化します。本当に面白い本でした。
構成もテレビ画面を見ているような錯覚に陥るほど場面や状況が刻々と変化します。本当に面白い本でした。
加筆完全版 宣戦布告 上 (講談社文庫)
敦賀半島には敦賀原子力発電所、美浜原子力発電所、高速増殖炉もんじゅ発電所がある。ここに北朝鮮の潜水艦が上陸して11名の兵士が潜伏する事態になったときに、日本の警察・自衛隊・政界がどう動くかをシミュレートしたのがこの小説である。不十分な法整備と、指導者の優柔不断により、警察・民間人・自衛隊に次々と犠牲者が出る。最終的には収束に向かうが、射殺も許されない警察官、十分な交戦規定もないまま前線に送り込まれる兵士は気の毒と言うしかない。日本の危機管理に対する警世の書である。
小説の構成の点では、敦賀半島で進行する警察・自衛隊の軍事作戦と、東京で進行する外事警察の防諜作戦(スパイ狩り)が同時並行的に描かれていて、立体感と緊張感を与えることに成功している。
やや話がうますぎる点もあるが、法律についても、外事警察についても、自衛隊についても良く調べて丁寧に書き込まれている。
小説の構成の点では、敦賀半島で進行する警察・自衛隊の軍事作戦と、東京で進行する外事警察の防諜作戦(スパイ狩り)が同時並行的に描かれていて、立体感と緊張感を与えることに成功している。
やや話がうますぎる点もあるが、法律についても、外事警察についても、自衛隊についても良く調べて丁寧に書き込まれている。