蠅の帝国: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)
本書後書きによれば、日中戦争から太平洋戦争に至るまでの間、若い医学生や医師は「ほとんど根こそぎ」軍医またはそれに準じる境遇に置かれたらしい。国内あるいは外地、病院あるいは戦場・被災地を問わず、彼らは戦闘に加わることこそほとんどなかった半面、死傷した将兵や市民に対する治療と死亡後の措置等に奔走したという。
似たような話が一つもない15編からなる本作は、戦前・戦中・戦後を生き抜いた彼ら15人の医学生・医師の「手記」等を素材にした、まるで中短編ノンフィクション集とでもいうべき作品集。原爆投下直後の広島、ソ連軍の突然の侵攻に直面した満州や樺太、軍民ともにもぐらと化して転戦した沖縄など、語り手である15人の「私」がそれぞれ人命を守り、救うという職業上の使命に邁進した模様が、冷静で客観的なタッチでどこまでも具体的に描かれている(中には、徴兵検査の担当医や馬術好きの軍医なども出てくるが)。みごとなものだ、と感じ入った。
似たような話が一つもない15編からなる本作は、戦前・戦中・戦後を生き抜いた彼ら15人の医学生・医師の「手記」等を素材にした、まるで中短編ノンフィクション集とでもいうべき作品集。原爆投下直後の広島、ソ連軍の突然の侵攻に直面した満州や樺太、軍民ともにもぐらと化して転戦した沖縄など、語り手である15人の「私」がそれぞれ人命を守り、救うという職業上の使命に邁進した模様が、冷静で客観的なタッチでどこまでも具体的に描かれている(中には、徴兵検査の担当医や馬術好きの軍医なども出てくるが)。みごとなものだ、と感じ入った。
帚木蓬生の世界~自身が語る作品に込める想い~ [DVD]
たまたま、今年、NHKEテレで帚木さんに 檀ふみさんがインタビューをする番組を見て、とても感動しました。それから、帚木さんの代表的な何冊かを読んで
このdvdを購入した次第です。お顏や表情を見てるだけでも、この方は心底優しくて弱い人への思いやりがある・・それは、本に出てくるきめ細やかで魂の入った人物描写を見ていてもよくわかります。インタビューは作家になった経緯とか、作品を作るご苦労、又、重篤な病を体験された時のエピソードなどもアツく話されています。飾らないお人柄が魅力的で引き込まれました。今後とも頑張って時代の持つ「影」の部分をぜひぜひ書いてください。帚木さんのヒューマニティあふれる作風や「時代」や「歴史」に対する批判的な視線から考えると・・個人的には、、2011年の「福島原発事故」以降ふるさとを失った人達の話などは、帚木さんなら、強い力を持って訴えて下さるのではないでしょうか
追記・・・このdvdの収録時間が少し短いのが残念でした。しかし、帚木さんの読者なら、きっと人間的な魅力あふれてる映像に心が癒されると思います
このdvdを購入した次第です。お顏や表情を見てるだけでも、この方は心底優しくて弱い人への思いやりがある・・それは、本に出てくるきめ細やかで魂の入った人物描写を見ていてもよくわかります。インタビューは作家になった経緯とか、作品を作るご苦労、又、重篤な病を体験された時のエピソードなどもアツく話されています。飾らないお人柄が魅力的で引き込まれました。今後とも頑張って時代の持つ「影」の部分をぜひぜひ書いてください。帚木さんのヒューマニティあふれる作風や「時代」や「歴史」に対する批判的な視線から考えると・・個人的には、、2011年の「福島原発事故」以降ふるさとを失った人達の話などは、帚木さんなら、強い力を持って訴えて下さるのではないでしょうか
追記・・・このdvdの収録時間が少し短いのが残念でした。しかし、帚木さんの読者なら、きっと人間的な魅力あふれてる映像に心が癒されると思います
天に星 地に花
大庄屋の家に生まれ医師となった主人公を中心として江戸時代中期の市井に生きる人々が描かれている。
大庄屋の家族とともに無名の農民達の日々の生活もよく描かれている。
当時の久留米藩の無謀過酷な搾取税制と戦った農民達の物語でもある。
けっして派手さは無いが感動がじんわり淡々と浮かんできた。
福岡県小郡市出身の作者の殆ど地元(あくまで現代のクルマ移動だとね)あたりが主な舞台。
西に背振山・北に宝満山・近くに花立山、そして南に向かって明るく開けた広大な筑後平野。
地理的な臨場感が伝わってくる。
そして龍のような大河が筑後平野の風土を完成させ、この作品の骨格の一部を成している。
豊穣の秋となった筑後平野を描いた緒方修一氏のカバー絵も素晴らしい。
読了後にしみじみ眺めていると、稲刈りに励む百姓夫婦そして畦を歩き去る医師のあふれんばかりの喜びが伝わってくる。
「今年は良かったなー」とか言葉を交わした後なのかな。
カバーではない状態のこの絵が欲しい。
同じ作者の「水神」、こちらも素晴らしい作品。
未読の人には先にこちらから薦める。
筑後平野久留米藩もの、という意味での連作なので。
大庄屋の家族とともに無名の農民達の日々の生活もよく描かれている。
当時の久留米藩の無謀過酷な搾取税制と戦った農民達の物語でもある。
けっして派手さは無いが感動がじんわり淡々と浮かんできた。
福岡県小郡市出身の作者の殆ど地元(あくまで現代のクルマ移動だとね)あたりが主な舞台。
西に背振山・北に宝満山・近くに花立山、そして南に向かって明るく開けた広大な筑後平野。
地理的な臨場感が伝わってくる。
そして龍のような大河が筑後平野の風土を完成させ、この作品の骨格の一部を成している。
豊穣の秋となった筑後平野を描いた緒方修一氏のカバー絵も素晴らしい。
読了後にしみじみ眺めていると、稲刈りに励む百姓夫婦そして畦を歩き去る医師のあふれんばかりの喜びが伝わってくる。
「今年は良かったなー」とか言葉を交わした後なのかな。
カバーではない状態のこの絵が欲しい。
同じ作者の「水神」、こちらも素晴らしい作品。
未読の人には先にこちらから薦める。
筑後平野久留米藩もの、という意味での連作なので。
閉鎖病棟 (新潮文庫)
この作品の序盤では、作品の舞台である精神病院へ、登場人物である患者たちが送られるきっかけになった事件が語られます。まず、ここで私は衝撃を受けました。
戦争体験のトラウマや、悲惨なレイプ体験、あるいは突発的な放火…
この本からは、精神科医である著者のあまりにもリアルな、精神病患者とそれをとりまく実態が語られています。
ただ、そのリアルさゆえ、展開の遅さや中盤の日常的なシーンには若干退屈される方もいるかもしれません。しかし、やはりこの本はできるだけ多くの人に読んでもらいたい!そう思えるだけのメッセージ性がありました。
主人公であり、精神病患者でもあるチュウさんのラストでのあの言葉は、「俺、人として認められたよ」という魂の叫びのようにも聞こえ、泣けました。
この作品を読んで、今の精神病患者に対する国や個人の扱い方について改めて考えてみるのもいいと思います。自分ならどうするんだ、どうしたいんだと自問自答したときに、この問題の深刻さがわかります。
戦争体験のトラウマや、悲惨なレイプ体験、あるいは突発的な放火…
この本からは、精神科医である著者のあまりにもリアルな、精神病患者とそれをとりまく実態が語られています。
ただ、そのリアルさゆえ、展開の遅さや中盤の日常的なシーンには若干退屈される方もいるかもしれません。しかし、やはりこの本はできるだけ多くの人に読んでもらいたい!そう思えるだけのメッセージ性がありました。
主人公であり、精神病患者でもあるチュウさんのラストでのあの言葉は、「俺、人として認められたよ」という魂の叫びのようにも聞こえ、泣けました。
この作品を読んで、今の精神病患者に対する国や個人の扱い方について改めて考えてみるのもいいと思います。自分ならどうするんだ、どうしたいんだと自問自答したときに、この問題の深刻さがわかります。