何というべきでしょうか、20世紀からのネットカルチャー/ゲームカルチャーを肌で感じてきた人には居心地の良いテイストの仏教入門書、そんなものはこの世に存在しないと思っていましたが、それが出版されてしまったという奇特な本です。
本書の調子に合わせて私の実例で示せば、例えば「いろは歌」は無常をうたったものですが私は普段そんなこと気にせず使います。その他にも我々の周りには仏教由来の言葉やしきたりが多数あるのですが、それをほとんど理解もせずお葬式のときにだけ数珠を持ち「南無阿弥陀仏」とか意味も分からず唱えていました(私は浄土宗なので浄土宗の例ですいません)。南無阿弥陀仏の意味を訊ねても、無常の意味を聞こうとしても親からは「とにかく南無阿弥陀仏を10回唱えれば良いの」としか答えが返ってこない。そもそも仏教ってなんなんだろうという疑問を住職にぶつけるべく「今唱えていたお経の意味は何なのですか」と問えば「死者があの世で楽しく暮らすように鼓舞するものです」と答えが返ってきますが、聞きたい事はそうじゃない、そのお経を唱える事に生きている我々にとって何の意味があるのかという事だったりするわけです。
そんな「仏教って何?」という素朴な疑問から「お寺ってどう運営されているの?」という内情まで、およそ「お坊さん」に関わることがぎっちり詰まった本です。本文は口語調でかつ重度のゲーマー(ビデオゲーム以外の世界も知っていないとならない)でなければ読み取れないように書かれていますが、豊富な脚注と口語調であるが故の理解のしやすさで軽々と読んでいけます。また
タイトルの通り仏教の基本的な考え方や宗教と人間との関わりについても紹介されており、過去に起こった事例がゲームの世界で再現されていたり、著者を頼って訪れる人たちに共通する悩みであったりと、風俗(エッチなほうではない)と宗教などとについても思いを馳せることが出来る良著です。
しかしながらこれだけで仏教をすべて知る事などできるはずもありません。そもそも仏教で教わるようにこの本のみで分かったつもりにならず、他の本を読んでいく事でより良い人生が送れるようになるでしょう。私の推薦は「
ダライ・ラマのビジネス入門 「お金」も「こころ」もつかむ智慧!」が次の一冊として最適かと思います。宗教という言葉が狂信的なカルトを指し示す事の多い現在、このような宗教入門書が出てきた事は喜ばしい事だと思います。