人生いろいろあります。その時にやけにならないように玄関に飾り、出かけるときにみています。

何度読んでも、山本海軍次官が必死で反対していた対米開戦が現実になった
ことが残念でならない。首脳部がこれほど強固に反対して事実一度は三国同盟
加入をつぶした海軍だったのに、結局日米戦になってしまう。阿川氏の記述を
読んでいると海軍部内に条約派対艦隊派の軋轢があったのとは別に「のらり
くらり派」があって、それが結局は日米開戦の一番の引き金になったのでは
ないかと思う。及川など。この「のらりくらり派」がもっとも罪深いのでは
ないか。そして及川だけでなく軍令部、海軍省の中堅でもこの「のらりくらり派」が
実は静かな大きな勢力だったのではないかと思った。豊田副武なども米内山本井上
路線の海軍の時代には陸軍を徹底して毛嫌いしていたが終戦の御前会議では、その
当時は安全な主張だったであろう戦争続行の立場に変わっている。こういう調子の
いい人々、海軍の「フレクシブルワイヤー」精神を取り違えた人々の残念な存在感を
阿川氏の文章の行間に感じた。

一方では阿川氏も言うように海軍次官の軍政の職務からGF長官になった山本も
あまりにも杓子定規に長官職の職務範囲に固執して、戦えと言われれば戦うのが
軍人との立場をとる。次官経験者が連合艦隊司令長官になるならそれ以上が求め
られていたのではないか。しかしそれはあまりにも無理な注文かもしれない。
決定的一撃をやったうえで譲歩して講和と言う絵を描こうとしてできない山本の
姿が描かれているが、そりゃ無理だ。

この本、開戦後の山本の行動はかなりあっさりと描かれていて、開戦前の反三国
同盟、反日米開戦の努力の記述が圧巻。それが事実山本と言う人だったんだろうと
思う。山本五十六と言えば連合艦隊司令長官だが、本当は海軍次官山本五十六を
記憶するべきとの阿川氏の思いを感じた。

日本の歴史に特筆すべき日本海軍の姿を描いてくれた阿川氏の仕事に感謝したい。

ものはとても良いです。

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