まず第一にユーリノルシュテインのアニメが見られる点が嬉しい。ご存知の通り 彼は極端に寡作な作家である。「話の話」の後は ゴーゴリの「外套」を製作しているらしいが それにしても「話の話」自体は20年程度前の作品である。そんな彼の本作でのアニメであるが これは美しい作品である。枯葉や落ち葉を描かせたらユーリの右に出る人はいないだろう。短い作品ながら陶然として見た。これだけでも 本作を観る価値はあると改めて思った。
次に連句とアニメがかように相性が良いことに心地よい興奮を感じた。考えてみると17文字しか使えない俳句が何かをあらわそうとしたら 当然ながら大きな「飛躍」は避けられないというのが 俳句の背負っている宿命である。また 俳句の持つ性格としては ビジュアルに訴えることの重要性がある。「飛躍するビジュアルな表現」と抽象するとこれはアニメではないか。
「古池や 蛙飛び込む 水の音」という芭蕉の俳句を映像化するに際して 実写かアニメかと聞くのも野暮である。
ということで 実に粋なアニメ映画である。これは正真正銘の「事件」であるとすら思うのだ。
安くは無いDVDだが 大丈夫 安いです。
エッセイに添えられる俳句がとても素敵で、まるでお気に入りの画集や写真集のような存在。気ままに読むとその文章の軽やかさと美しさに魅入られる。
最小の文学である俳句の素晴らしさは五七五という型に世界が込められていることだけど、著者ならではの世界観が垣間見られ愉しい。レビュー
タイトルは著者の俳句から。