あの名門、慶應義塾大学塾長の清家先生の本です。

といっても、内容はものすごい基本からわかりやすく説明しており、数学が苦手な人でも経済学に触れたことのない人でもすんなり読めます。

今の日本の労働問題に興味があるが、何をすればいいかわからない人、
大学の授業で労働経済学をとったが、一回も授業に出ていない人、
今の日本を憂いている人になりたい人、
などにおすすめです。

　日本的雇用慣行が崩壊したとか、競争を勝ち抜くためには大幅な見直しが必要だといったことが声高に叫ばれるなか、本書ではその経済合理性、そして新しい時代への適合性を強調する。一方では、年功賃金のピーク前倒しや非正規労働者の雇用保障など、新たな時代の要請にかなった改革も唱える。
　労働経済学の第一人者であり、政府審議会の会長や学長も務める著者ならではの目配りが利いて、かつ革新的な良書である。

私たちは「過度に労働に依存した社会」に暮らしている（宇野重規、第五章）。仕事を失えば収入源はおろか、自己実現への道も、社会とのつながりも失ってしまうからだ。しかし、であれば、私たちの思考もまた「過度に労働に依存した思考」に陥っているのではないか。そんな危惧を大いに抱いた。社会や人や生きることを、「労働」の側面からしか考えない自分が実際にいるからである。本書は、そんな私たちの偏狭な思考をやわらげてくれる。しかも、「地方」や「中間組織」という言葉のなかにその活路があることを、かんで含んだように解き明かしてくれる。「生きる」ことは「稼ぐ」ことだけではない。「仕事」をする。「暮らす」。そんな当たり前の広がりを持っていることを、歴史、哲学、データ、そしてフィールドワークをふまえて論じてくれている。加えてその行間には、こんなメッセージが込められているように感じた。そろそろ大人の議論をしよう。ホコリを舞い上げるだけの議論、自説を声高にマクシタテルだけの議論はもうそろそろ止めにしよう！まことにもっとも。異論はない。