サブ・
タイトルにもあるように、「すべてはディランの歌から始まった」著者の自伝的エッセイです。アメリカがもっともアメリカらしかった(最後の)時代と言われる60年代のアメリカに留学した著者は、「ボブ・ディランの夢」や「
スペイン革のブーツ」(この曲と、松本隆の「木綿のハンカチーフ」の類似について言及した文章を目にしたことがないのは、僕の寡聞ゆえなのでしょうか)さながらの出会いと別れを繰り返します。行間が変に輝いて見えるのは、「60年代のカリフォルニア」を特権的に生きた著者への憧れからでしょう。「60年代」だけでなく、それに「カリフォルニア」までついているのです。同世代の人(60年代を生きたこと自体を特権的に語る人も多い)でも羨ましくなるはずです。各章に冠せられた
タイトルも、きっとこの時代を生きた人には特別の感慨があるでしょう。後追いの僕のような者でさえ、歌そのものの良さから喚起され、ぐっときてしまうのですから。
読んでいて、ただひたすら羨ましくなりました。