「ナルニア国物語」実写版の第3章。原題は「朝びらき丸 東の海へ」。
前2作と違い4兄弟中2人+αが異世界に導かれ、ナルニア王と共に行方不明者を捜索しながら大海原を渡っていく海洋冒険ロマン。
一応、原作に登場する話が全て出てきはするが、出て来る順番はバラバラ、話もかなり違い、最終的に悪を滅ぼす等オリジナリティ溢れる話となっている。
しかし、シリーズを通して各所に伏線が張られる等映画のレベル自体はかなり高く、児童文学ではなく冒険活劇として見れば評価出来る部分は多々ある。
奴隷商人、透明人間、黄金の泉、闇の霧、ドラゴンに海蛇、周辺では人魚が踊る。
一通りの<海洋冒険編にありそうなプロット>はこなし、その中で
7卿の捜索、エドマンドとカスピアンの対立と和解、エドマンドのアイデンティティの確立、自らと向き合うルーシー、ユースチスの自立とリーチピープとの友情とキャラクターの成長を描写する場面がいくつも登場し、ドラマティックになっている。
さらに原作にはいなかった、あるいはチョイ役だったドリニアンやラインス、ラインスの娘ゲイルなどが主要人物の脇を固め、前2作同様「徐々に深まっていく絆」を描いている。本当の危機的状況にだけ助けに来てくれるアスランは、ルーシーやユースチスの恩人であり、大事なキーパーソンなのだろうが、結局は登場人物ではなく、それらを超えた神の存在なのだろう。
ワンシーンのみとは言え、ピーターとスーザンが登場しているのもいい。
近年大ヒットしている「ワンピース」などの人気は、船上での共同生活を送る者達ならではの絆が土台になっているのではなかろうか。
公開前は
タイトルの違い、原作の設定等からあまり期待していなかったが、蓋を開けてみれば他の映画を遥かに凌駕するエンターテイメントを見せて貰い、実に楽しめた。
ラストの終わり方も実に見事。ドアを閉めて終わり、原作のイラストと共にエンディングテーマが流れていく手法は見ていて思わず笑みがこぼれた。
そして鑑賞前に最も気になっていた、「エドマンドの白い
魔女との決別」。白い
魔女は今回実際には出てこないが、ピーターのいない世界でエドマンドは
魔女との因縁を断ち切ることが出来るか。同じく欲にとり憑かれたユースチスは、エドマンドから見て過去の自分だったのだろう。エドマンドが頭の中を想像しながらも、ハラハラの展開に心を躍らせ、最終的に満足のいく結果で終わり、嬉しかった。久しぶりに、何度も見たい映画に会えた気がする。文句なしの☆10!
眼福。