F.キャプラ監督で、この
タイトル(「It's a Wonderful Life」)なので、内容の趣旨は容易に推測出来るが、期待を裏切らない出来。冒頭で、自殺寸前の主人公(J.スチュワート)に対して守護天使が派遣される事を示唆している点から、本作がファンタジーである事が強調され、更にクリスマス・イブの奇蹟を描いている事から、「クリスマス・キャロル」を想起させるが、構成上の工夫と監督の信念とが本作に別の魅力を持たせている。
(恐らく)神が守護天使に主人公の"人となり"を教えるという体裁で、幼い頃からの主人公のエピソードが順次紹介されて行くというのが構成上の工夫。大志を持ち、世界に羽ばたこうとしていた主人公が、様々な理由で小さな田舎街に留まり、街のために無私の努力を続けていた事が時にはユーモアを交えて語られる。人生には、「金」以外の重要な"もの"が存在するというのが、主人公(=監督)の信念である。
そして、守護天使が実際に自殺寸前の主人公の前に現われ、主人公が存在しなかった場合の世界を主人公に見せる終盤が秀逸。気付かなくても、どんな人でも必ず他の人の役に立っていたり、他の人の希望や愛情の対象になっている事を丹念に描いている。最後に、「蛍の光」の原曲「Auld Lang Syne」が、「友との懐かしい思い出」の曲として流れるのも感動的。予定調和を越えた素晴らしさがある。観る者に生きている事の意義・有り難さを感じさせてくれる秀作だと思う。