本国アメリカでは3000万ドル以上の興行収入をあげ、続編の企画も持ち上がるほどのヒット作となったにも関わらず、日本での公開時は、踊らないグレゴリー・ハインズに、当時は知名度の低かったビリー・クリスタルの共演ということもあってかさほど話題にならず、ビデオ化のみで埋もれていた本作が待望のDVD化。
この映画、80年代に流行ったバディ・ムービーの1本ではあるものの、どうしてどうして今観てもかなり面白い。主人公たちが腕利きの刑事でありながら、思いがけず大金が入るや、危険と隣り合わせの刑事稼業を“怯えて続けていく”(原題)のはまっぴらと、脱サラならぬ脱ポリしようとするのがユニークだ。もともと最初の脚本では定年間際の刑事という設定で、ジーン・ハックマンとポール・ニューマンを想定して書かれていたのだとか。ハイアムズの提案で主人公を若返らせたことで、自由人的なキャラクターをもつ刑事像が生まれ、それが本作のノリの良さにも繋がっている。
「48時間」のエディ・マーフィに倣ってか、役者としての見せ場が多いのはB・クリスタルのほう。生意気な後輩コンビが44マグナムを持っているのを見て、「ダーティ・トニーだ」とイーストウッドの口調で言ったり、内線電話で上司(悪役ではないダン・ヘダヤ!)そっくりの物真似を披露したりと笑わせてくれる。
さらに何といっても見所は、ハイアムズの才気が光るアクション・シーンの数々。狭いアパートの室内を銃弾が飛び交う乱射戦、ハイウェイから鉄道の線路に脱線(入線?)しての大カー・チェイス、広大な吹き抜けを持つビルのエントランスを縦横無尽に駆け巡る銃撃戦等、見せ場の空間の活かし方、映像での捉え方の見事さは、近年の、手ブレ映像と細かすぎるカット割りしか能の無いアクション映画とは別次元の出来栄えだ。ビデオはトリミング版だったが、今回のDVD化でハイアムズならではの映像をようやく本来のシネスコサイズで味わえるのは嬉しい限りだ。
※ 2013.3.31修正
当初未収録かと思っていた月曜ロードショー放映時の富山敬&安原義人(B・クリスタルの声に激似)コンビの吹替がめでたく収録されるようで、となれば文句なしの五つ星。ジョー・パントリアーノ扮する売人の面通しでの二人のやりとりや、クリスタルと、彼の妻役のダーラン・フリューゲルとの真剣さとコミカルさが同居したようなやりとりの場面は、ぜひ吹替で楽しみたい。
僕がアムネスティを知ったきっかけが、本作のDisc1・2収録の’86年の「A Conspiracy Of Hope」コンサートでした。ニュージャージー州のジャイアンツ・スタジアムでの痛快な“音楽的な陰謀” に、7万人のうちのひとりとして加わった記憶は今でも鮮明に残っています。どのミュージシャンも公平に、一組あたり30分程度の割り当てだったので全演奏を納めてほしかったのですが、さすがにそれはできなかったようで・・・。本作を買った動機もこのコンサートをもう一度見たかったから。映像はその日にライヴ配信していたMTVのもので、画質も音質も十分に合格点の内容。PPM、ジョーン・バエズ、マイルス・ディヴィス、ルー・リード、ジョニ・ミッチェルといった大ベテランがジャンルを超えて集まり、本当に気迫のこもった演奏を披露します。「So」の大ヒットを引っ提げて凱旋演奏のピーター・ガブリエルはアムネスティのテーマソングともいうべき「Biko」でしっかり締め、「ジョシュア・トゥリー」での大ブレイク直前のU2はすでに見事なオーラとカリスマ性を見せ、このためだけに貴重な再結成をしたポリスは十分タメの効いた演奏でトリを務めます。
1961年、人権保護を訴えて創設されたアムネスティ・インターナショナルは、国連とも連携するNGO団体、77年には
ノーベル平和賞を受賞しています。初期のころからモンティ・パイソンやピート・タウンゼントはじめイギリスの名だたるミュージシャンたちによるライヴやコンサートを通じて一般の人々へ支持の訴えを行ってきました。そういう歴史に立ってアメリカ支部が全米レベルでの認知度アップのために企画したのが「A Conspiracy Of Hope」の全米ツアー。それは’88年には「Human Rights Now!」として、欧州・北米・日本を含めたアジア・アフリカ・南米を回る地球規模のコンサート・ツアーに発展します。Disc1・2はコンサートのみですが、Disc3では、「Human Rights Now!」の中心となったブルース・ス
プリングスティーン、ピーター・ガブリエル、スティング、ユッスー・ンドゥール、トレーシー・チャップマンらが、いろいろなインタビューで人権保護・擁護をマスコミに訴える姿が捉えられており、Disc4以降も同じ構成で音楽とアムネスティの両方の歩みをつづっています。だから、本作は単なる音楽DVD集ではなく、’90年の「An Enbrace Of Hope」までを含めた14年間に亘る、アムネスティと出演者たちの“自由”のために歩んだ記録、と受け止めるべきものでしょう。
そうはいっても、音楽的にみて作品後半でも注目すべきものは多い。特に印象深いのはDisc4の9から11、Disc5では2から4、絶頂期のアラニス・モリセットが5から7で、25から27ではレディオ・ヘッドが静と動の見事なコントラストを、等々。そのほかにも掘り出し物の記録映像がいろいろとあります。
詳細な日本語解説、オリジナルブックレットの日本語訳は、このムーヴメントを理解するのにとても助けになります。また、「A Conspiracy Of Hope」ではフーターズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンズ」はじめ日本限定の
ボーナス映像が4曲はいっています。値段は高いですが、貴重な音楽的歴史としての価値だけでなく、素晴らしい演奏を堪能できる作品として、オススメしたいです。