この映画の最大の問題はリ
アリティの欠如だと思う。寺尾聡の演じる父親が娘を殺した犯人を探して冬の信州をペンションからペンションへと転々とするのだが、普通だったら車で行くだろうところを、この人物は徒歩である。夏でも徒歩でペンションを歩いて回るなどとてもできるものではない。まして冬なら尚更だ。また、警察がこの人物を追いつめる場面でも、軽トラックに乗って逃げるのだが、それを二人の巡査が黙って見送っているだけである。まさか、彼等も山中のペンションまで歩いて登って来たわけではないだろう。なぜ、パトロールカーで追うことをしないのか。原作を読んでいないので比較するわけにはいかないが、この例のように、映画としては首を傾げざるを得ない場面が非常に多い映画である。原作自体がリ
アリズムのないものなのかもしれないが、シナリオにも演出にも問題があるのだろう。寺尾聡の力演が無駄になったようで残念である。日本の刑法が犯罪者に甘すぎるというメッセージだけは伝わってくるが、作り方がずさんで感心できない。