モーガン・フリーマン出演の「最高の人生の見つけ方」が今年公開されたが、彼の代表作を1本選ぶとすればやはり本作になるだろう。暖かく
ティム・ロビンス演じる主人公を見守り、彼から希望を与えられ変化していくキャラクターが素晴らしい。その造形も含め、すべてが感動のラストに向けて収斂していく無駄のない脚本は見事の一言に尽きる。伏線を張り巡らせた無駄のない構成はまるでラストを消失点とした緻密な遠近法の絵を観ているかのようだ。もっともS.キングの原作の力も大きい。
冤罪の恐ろしさ、終身刑が精神に及ぼす影響、刑務所生活の残酷さ等のテーマは重いが、その中でどんな状況でも自暴自棄にならず絶望しないこと、希望を捨てないことの大切さが心を打つ。刑務所を舞台にした作品として、語り口は異なるものの、「ミッドナイト・エクスプレス」と双璧をなす名作だ。そして、忘れられない名場面の数々。終盤30分ほどの畳み掛ける展開はもちろん、過酷な刑務所生活の中で仲間達がビールを飲む場面、そして
モーツァルトのフィガロの結婚の
アリアが刑務所中に響き渡る場面。特に後者は
モーツァルトの音楽の偉大さを雄弁に物語っていてとても忘れることができない。作品の展開の鍵を握る主人公の監獄の部屋のポスターがリタ・ヘイワース、マリリン・モンロー、ラクウェル・ウェルチに変り、使われる音楽もノスタルジックな
ジャズ、カントリー、ロックンロールに変わって行く等、塀の中の物語でありながら、アメリカ社会・文化の変化もしっかり織り込む演出の細かさにも唸らされる。文句なしの星5個の名作だ。