日本ではあまり馴染みのないホーム・インベーション・ホラー(家宅侵入ホラー)というジャンルに分類される「サプライズ」なる怪作を手掛けたアダム・ウィンガード監督による長編デビュー作なんですが、去年末に静かに公開され、静かに消えて行ったスリラー映画です。
過去と現在の時系列を組み換えてストーリーを展開させる等、明らかに長編初作と分かる実験的要素に満ち溢れた代物なんですが、素人臭い撮影をしたカメラマンがかなり足を引っ張ってしまった映画でして、米国のみならず、日本でも酷評されてしまった作品でもあります。
確かに、撮影された映像は、矢鱈とアップが多い上、画面をいちいち揺らす為、観ていて非常に疲れる箇所が多く存在します。
こうした点は、非難されても仕方ない感じを受けました。
そもそも、何故、こんな映像を撮る為にカメラマンを2人も起てたのか…(泣)
甚だ疑問にも感じたりもしましたが、人と人の純然たる愛情を根底に敷き詰めた物語は非常に好感が持てました。
特にラストの展開は好感触です。
後々、「ABC・オブ・デス」や「V/H/S」といった短編の仕事が舞い込んで来たのも頷けるラストの締め括り方でした。
因みに、監督は、時系列だけでなく、男女の視点を行き来する様に物語を紡ぐ事で、人間関係における信頼と裏切りを浮き彫りにしようと試みたそうです。
成功しているかは別として、観客に考える幅を残した作風が非常に良く、こうした幅の在り方を作り上げる編集の手腕は中々のものでした。
やはり、編集は監督が手掛けるのが一番ですね。
好みの割れる作品ではありますが、後々発売されるであろう同監督の「サプライズ」が好きな方は、自宅のコレクションに加えても良いのではないでしょうか。
一言で言ってすばらしい。ある意味とても単純な短い話の連作である。主人公の
犬の視点で書かれているという点が、特異なところだろう。
でも、この本の中に息づいている愛情ときよさに基づく価値観のなんとすばらしいことだろう。中心に現されているのは物言えぬ動物たちへの愛情である。でもそのもっと奥にあるのは、神様が造られたものたちへの愛情、弱者への愛情、神様を信じることによる道徳観。100年前のアメリカはそれが当たり前であったのだ。
動物好きの読者は動物物として読んでも十分感動を受けるだろう。また、ある一家の物語としても感動を受けるだろう。主人公の一人ローラ、心優しく、愛情豊か、他人や動物を思いやり、悪には完全と立ち向かう。彼女のことを文中では、まさしく清教徒(プロテスタントのクリスチャン)と呼んでいる。
子を持つ親は、登場する子供たちのように、自分の子供が育ってほしいと願うだろう。そして、自分も登場する親のようになりたいと思うだろう。
日本では心無い人たちによる動物虐待や心無い人たちが自分勝手に捨てていく言葉なき弱者であるペットたちがTVを騒がせる。
アメリカも100年前と比べるとずいぶん余裕をなくしたように、そして自己中心であるように思える。
なにが違うのだろう。この本はほぼ実話である。昔あったものが失われているのだろうか。アメリカが失ったものは、そして今私たちが持っていないものは一体なんだろう。
「あなたの隣人(言葉なき弱者なる動物も)をあなた自身のように愛しなさい。」「(創造主なる)神を畏れ敬いなさい」
100年前の愛は、いまどこに。なくした大事なものを取り戻そうと思わさせずにはいられない本である。