生島治朗のデビュー作。すばらしいハードボイルド小説であります。彼らが日本のハードボイルド小説を切り開いてきたことは、本書を読めば理解できます。ラストまで緊迫が続き、ラストも納得です。全てのハードボイルド読者に勧めます。
父親の本棚から拝借。
中国に在住する身でこの作品に出会えた事を本当に幸せに感じた。
ストーリーもさることながら、登場人物の対比が素晴らしい。
主人公の
紅真吾へ彼の友人である橋田雄三が宛てた手紙。
「もっとも貴君などはせまい内地にいるより、広大な中国大陸で思う存分腕を振るったほうが本望だろう。」
当時も現代同様、「海外に飛び出て、飛躍したい人」「国内に留ざるを得ない人」がいて、
さらに広大な大陸でも、多種多様である。
真吾と旅を共にした葉村宗明。葉村は日本と中国のハーフだ。
葉村は言う。「
紅さん、あんたは内地に帰れるが、オレは帰れない。中国へやってくる日本人たちは誰でも片足だけは内地へ残してくるんだ。いつでも危なくなれば、内地へ帰れるようにな。そのくせ、この中国が故郷のような顔をしてみせる。あんただけはそんな連中とはちがうと思ったぜ。
紅さん。しかし、結局、あんたは日本人なんだ。」
上海生まれの作者のみ書ける台詞。他の作品もぜひ読んでみたい。