ハスキーな声と爽やかなアレンジとが相まってとてもいい仕上がりです。もともと拓郎ファンなのでラジオでこれを聴いてすぐに購入しました。3年前に亡くなった友人を偲ぶ飲み会をした後に二次会のカラオケでこのヴァージョンを歌ったのでこれを聴くと故人を思い出すようになっちゃいました。そういう意味でも思い入れあるカヴァーです。
5人目のフォーライフは、一人の川村ゆうこへと向かうだろう。
前回、川村のデビューアルバム「こんなに空が青くては」がCDで復刻されたときの
レビューに、僕はそう書いた。
2009年から久しぶりに歌い始めた川村は、ようやくここに今の川村ゆうこを提示してく
れた。
2010年7月から、柳田ヒロ、前田達也とライブを積み重ねてきた川村だったが、なか
なかレコーディングの機会に恵まれず、ライブで力を蓄えることに専念していたよう
だ。
タイトル曲である「愛は君に姿を変えて」については、川村らしいエピソードがある。
ある日3人でのライブが終わり打ち上げとなり、前田がこの曲を弾き語ったという。
そう、この曲は門谷憲二作詞、前田達也作曲なのだから、前田が歌うのは当然。
しかし、この曲を聴き終わった川村が、「あんた(前田)には似合わない。あたしが
歌う!」と強奪したというのだ。以来この曲は、川村のライブで重要曲になっていっ
た。
昨年10月、
渋谷を歩いていた門谷憲二さんは、とあるライブハウスに、フラっと入っ
てみた。そこには、川村、柳田、前田が居た。満員ではあったが、お店の計らいで席
に座ったとたん、「愛は君に姿を変えて」を川村が歌い始めた。門谷さんはあまりの偶
然に呆然としたという。ところが、入ってきた門谷さんを見て前田は「川村が呼んだ
」と思い、川村は「前田が呼んだ」と思ったという。全ては偶然なのに・・・あるいは
川村の天然が・・・
偶然なのか、はたまたこの歌の持つパワーのなせる業なのか。
川村は、柳田・前田とライブを行っており、ドラムレス、ベースレスという一風変わ
った編成になっている。「音を足すことは、いつでもできる。今は3人できっちりと
した音作りをしたい。」これは、柳田が2010年7月のインタビューで発言した言葉で
ある。その片鱗は、例の復刻版「こんなに空が青くては」に収録された「風になりた
い(ピアノバージョン)」にも現れている。私達の耳に馴染んだ川村のデビュー曲では
あるが、当時のフォーライフ人脈が総出で厚いサウンドを作り上げていた。だが、「
風になりたい(ピアノバージョン)」での柳田のアレンジ、イントロのピアノの美し
さはどうだ。ドラムレス、ベースレスを全く感じさせない仕上がりになって胸に迫っ
てくる美しさだ。
そして、今回レコーディングに当たって、いよいよ「音を足す」ことになったわけだ。
ベースに江藤勳、ドラムスに田中清司、曲によっては
バイオリン有働皆美、コーラス
東郷昌和が加わる。
全曲のアレンジは、もちろん柳田ヒロで、すばらしい仕上がりになっている。プレス
キットには、「川村のJAZZYボイス」とある。
JAZZもそうだが、もはやジャンル分けは何の意味も為さない。
これが、今の川村ゆうこなのだ。
確かなことは、このアルバムが川村の今であり、これからの音楽性を示したものだと
いうことだろう。フォークソング、ニューミュージックという言葉にも苔が生え、J
−POPという言葉が跋扈する今、
このアルバムは、川村ゆうこの今を提示すると同時に、「折り返しを過ぎた」新しい水夫
たちへの応援歌であり、慰め・癒しとなるだろう。