ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
ハビエル・バルデムの、自分なりの論理には忠実に、特異な武器でおかっぱ頭で黙々と「仕事」をする姿が超印象的。その様子はブラック・ユーモアすら漂わせるのだが、不条理そのもので、存在感が強烈。私は「宮廷画家ゴヤは見た」以来のファンだが、彼の風貌・個性に対する好みがかなりこの映画の感想に影響するだろう。
原題はno country for old manで、老人にはもう住む国はない、というテーマだが、その老人である老保安官が昔日の価値観を体現していて、渋くてよい。
しかし、こうまで不条理がまかり通るなら、no country for anyoneと言うしかないだろう。そこまで話を広げるのが原作者や監督の意図だったのか、少し疑問に思わないでもない。
夜になるまえに [DVD]
ジョニー・デップが好きなので、俳優目当てで買いました。
少ししか出て来ませんが、充分に存在感があり、ストーリーの中で重要な役割だったのでうれしかったです。
小説家である主人公の人生を映画化していますが、ゲイであるゆえの様々な苦悩を切なく表現してあり面白かったです。
ゲイからみた男の美しさを感じさせ、個人的にベスト8に入る映画でした。
BIUTIFUL ビューティフル [DVD]
2010年に、メキシコ、スペインで共同制作された本作品は、余命僅かの男の残された日々を描く、佳作。
スペイン・バルセロナに暮らすウスバルは、別れた妻との間に生まれた姉弟を引き取り、生活のために、不法な仕事もこなす日々であった。
そんな彼に下ったのは、癌による余命二ヵ月の宣告だった…。
主人公が40代の成人男性ということもあり、激情に駆られた哀しみと言う表現ではなく、自分の人生で長い間持っていた「わだかまり」をどのように整理していくか、という視点で、残された時間に冷静に対処していく姿が印象的な作品です。
作品中には、いくつか象徴的な事象があり、これからご覧になる方の参考として綴ってみます。
【BIUTIFULとは?】
タイトルを観て、綴りが誤っている、と思った方も多いのでは。
私は、スペイン語の綴りか、とも思ったのですが、邦題は、アルファベットとカタカナの並記になっていることから、この綴りには何か意味がありそうです…
【若い男】
冒頭、主人公が雪の降る林の中で、若い男と会話するシーンがあります。
この男は誰?
やがて、主人公は思わぬ形で、その男に遭遇するのですが…
【2つの「…」】
時折、部屋の天井が映るシーンで、見間違いか、と思われる「…」が目に映ります。
また、主人公が人を抱き締めるシーンで、聞き違いかと思われる「…」が耳に届きます。
それは、同じようなシーンで次第にはっきりとしてくるのですが…
最後に、――本作品は余命僅か、と言うことで「死」をテーマとした作品と言えますが、同時に「生」をテーマにしているとも言えましょう。
本作品が、生み出されるきっかけとなった、末期癌に侵された男を描いた黒澤明監督の映画のタイトルは「生きる」ですから。