陰翳礼讃 (中公文庫)
陰翳礼賛。日本の伝統美を語る名随筆としてあまりにも有名な作品。
であるばかりでなく、同時収録の他の随筆もみな面白いもの揃いです。
とりわけ、「な~んかとっつきにくそう、タルそう」とお思いの方にもお勧めなのが、最後に入っている「厠のいろいろ」。厠、そうトイレです。美しいものにしか興味関心のなさそうなこの著者にしてこのテーマというだけで驚きですが、意外にもかなり楽しそうにうんちくや体験談の数々を披露してくれています。トイレ・エッセイの嚆矢と言ってよいんじゃないかと思われます。そして中国の故事として紹介される理想的な(?)トイレ、というのがまたいかにも凝った奇想の一品なのですが、さてどんな代物か、興味を持たれた方は是非ご自身でご確認下さい。もちろんトイレ内読書にも最適。文豪が一気に身近に感じられる(かもしれない)、短くて楽しい一編です。
ダーリンは外国人―外国人の彼と結婚したら、どーなるの?ルポ。
タイトルに反して、このマンガ・エッセイでは夫とのカルチャー・ギャップがメインではなく、「夫がどういう習慣・性格を持った人間か」「そんな夫とうまく付き合うには」という、夫オリエンテッドな話が多い。「外国人の夫がどうこう」ではなく、「夫がどうこう」という話が殆どなのだ。だから、作者がどれだけ夫のことを愛しているか、ということが感じられる話が多い。内容の薄さに関わらずファンが多い秘密は、そのへんにあるのではなかろうか。
青空クリニック 1 (講談社コミックスキス)
「君の手がささやいている」で有名な軽部さんの現在連載中のマンガ。
6月28日から、この作品を原作とした昼ドラが開始!
(だから現在在庫切れだけど補充されるでしょう)
東京の病院で働いていた藤井優が、北海道・天売島の診療所に赴任し、真の医療とは何か?ということに気づいていく話です。
つまり「Dr.コト-診療所」の女性版だとも言えますが、Dr.コト-は天才外科医で、藤井優は内科医。
しかも女医ということで、島に生きる女性たちの女性ならではの悩みに直面していきます。
この1巻は主に、島に赴任するまでの導入部分。
彼女が今の自分に疑問を感じ、自分探しのために島に行くことに決める部分は、個人的にかなり身につまされました。
銀の匙 (岩波文庫)
30年ちょっと生きてきたが、今まで読んだ本の中で、ベスト3に入る作品。最高傑作といっても過言ではないと思う。
淡々と子供時代のことが述べられているだけなのに、とても美しくて情緒深い。
夏目漱石が絶賛し、後篇をよりほめたらしいけど、素人の私にとっては、後篇は文体が技巧的に過ぎるように感じられて、自然体である前篇のほうがよく思われる。