もたない男
大学を卒業して就職する前後、著者の「じみへん」はスピリッツの中で欠かさず読む作品の一つだった。シュールな感性に惹かれるものがあったと記憶している。いつしかスピリットを読まなくなって「じみへん」からも離れたわけだが、今度はエッセイで著者に再開することになった。
内容はタイトル通り、とにかくモノを持たない著者の生活や考え方が描かれているわけだが、「持たない」というよりは「捨てる」という方が正しいようだ。著者にも物欲はあり、モノを購入するのは大好きと本書の中でも語っているが、モノを所有していることが精神的な負担になるとのことで、買ったものも結局は殆ど捨ててしまう。
その捨て方は特に極端で、読んだ本は読んだページから切り取って捨ててしまうし、ボールペンもインクを使った分だけ削って短くしてしまう。自分が過去書いた生原稿まで捨ててしまうのはもったいない感じもするが、人はここまで捨てられるのかと感心とした。
本書を読み終わって振り返ると、自分の部屋にいかにいらないものが溢れているかに気付く。取りあえず目についたいくつかをゴミ箱に捨てたり、シュレッダーにかけるとすっきりした。本書には伝染性があるようだ。