ATARU DVD-BOX ディレクターズカット
昨今の漫画原作にたよらない意欲的なドラマだと思います。新しい試み、新しい作品でした。今のテレビドラマの現場にて、このような作品が作られる事が稀だし。毎回、興味ぶかく拝見しました。仲居くんにとってもこの役を演じる事は、リスクもふまえていたと思いますが、非常に素晴らしい演技でした。もう一度、綺麗な映像でATARUの世界に浸りたいです。
オレステス [DVD]
演出家と主演の役者が好きなので観劇しましたが、さらに進化した姿を目撃できた舞台だと思う。ギリシャ悲劇が自分の肌に合うというのももちろんあるが、役者の生み出す濃密な空気、世界観、力のある役者同士の演技のぶつかり合いなど、一瞬も目が離せない気持ちであった。主役は一瞬一瞬の表情が真に迫っており圧倒される。
鷺と雪 (文春文庫)
第141回直木賞受賞作にして、「ベッキーさんと私」シリーズの最終作。
昭和初期の華族のお嬢様と、社会情勢の中、北村薫さんお得意の「日常の謎」をきめ細やかな筆致で記した連作短編集。
華族主人の神隠しの謎を描いた「不在の父」、上野で補導された良家の少年の行動を探る「獅子と地下鉄」、物語を閉じる表題作「鷺と雪」の3作。
昭和11年2月の「あの」事件の中で「わたし」花村英子に起こった偶然が、物語の余韻を何時までも心に刻みつける。
もう少し読みたい、もっと読みたいと思いながらも、雪の帝都とこれからの時代を象徴させる物語の閉じ方で非常に印象的。
「日常の謎」のミステリとして良く出来ているのは「獅子と地下鉄」。
良家のお坊ちゃまが、夜の上野で補導される。彼が残したメモには上野と浅草の文字。上野と浅草に共通するものは? 上野に何があったのか?
彼の行動についての謎解きも、その視線も優しくて大好きです。
元気でいてよ、R2-D2。 (集英社文庫)
北村先生は、恐怖小説をあまりお得意ではないようです。8短編のうち、日常の謎解きの趣がある「マスカット・グリーン」が一番面白かったと思います。「微塵隠れのあっこちゃん」も、ああ、と腑に落ちる仕上がりでした。その他は、総じて底の浅い印象でした。
特に、北村先生の自信作らしい「腹中の恐怖」は、題名が既にネタバレです。「ざくろ」は逆に内容がそれほどではないものの、題名の暗示する赤くざっくり裂けたイメージが浮かび、秀逸なタイトルでした。