地獄に堕ちた勇者ども [DVD]
絶対にビデオで見るべきでない映画というものがありますが、ビスコンティの作品はその最たるものといえるでしょう。特にこの作品のように、舞台劇的な要素の強い(アクションや編集の妙で見せるのでなく、あくまでも演技で勝負する)作品は、その空気に上手く乗り切れないと、観ている方は非常にダレてしまいます。以前ビデオ版を試したことがありましたが,映像が汚くて観ちゃいられませんでした。その点、劇場で観るほどの臨場感は望めないにせよ、DVDでの復活はうれしい限りです。
それにしても毒のある作品ですねえ。もうあまりに毒が強過ぎて、分からない人にはまるで分からないと言う可能性さえあるでしょう。一つの文化の崩壊を描いた作品として、近年"アメリカン・ビュティー”がありましたが、この作品に比べると軽い軽い。何やらただならぬ妖気に満ちあふれた映画です、しかしながら、私は"退廃美”とか、"狂気と倒錯”といった言葉のみに惹かれてこの作品を見た人はむしろその本質を見失うのではないかと危惧してしまいます。
この作品はヨーロッパ文明の崩壊を象徴的に描いた作品ですが、その近代ヨーロッパ文明の礎を築いたルネサンスを強力に推進したプロモーターは、ほかならぬビスコンティ家だったのです。それから約500年後、この家系の末裔、ルキノがその終焉をみとることになろうとはー。彼にとってこの作品を作るということは、"退廃の美"などと言う生易しいものではなく、"痛恨の極み"そのものだったのはないでしょうか。その運命も凄まじいが、それを敢然と受けて立ち、芸術へと昇華してしまう彼のエネルギーもまた凄まじい。まさに刮目して観るべき作品だと思います。
地獄に堕ちた勇者ども [VHS]
地獄に堕ちた勇者どものVHS。
DVDと違って結構カットされているシーンが多いです。
一番惨いのは湖に全裸で泳ぎに駆けていく若者たちのシーン。
下半身(おしり)を隠すために画面の下半分が全部モザイクになっているのですな(あ〜あ)。
今では考えられないほど画面に手を加えられている。
そういった日本の検閲に引っかかって修正されてしまった名作の資料性の価値はあります。
話の種として保存すべきビデオテープ。
地獄に堕ちた勇者ども [DVD]
なんというか「やはりビスコンティやな」っと思わせてしまう重厚さでした。ヒトラーが台頭する虚虚実実の駆け引きの流れを知っていないとこの映画の面白さは半減するかもしれません。なぜナチス同士が殺しあうのか?って途中で訳が分からなくなる人もいるでしょうから。この事件で唯一ヒトラーを「おい」って呼べた同士(突撃隊のレーム)を抹殺してしまうことになります。まあこれで誰も気兼ねする人はいなくなったわけです。ドイツ人の映画のはずが英語ですし、スウエーデンの大女優イングリッド・チューリンからイギリスのシャーロット・ランプリング(この人この手の映画よく出ますね)、青年はフランスのルノー・ベルレーでしょうか??俳優さんは盛り沢山です。ラストシーンは狂気ムンムンですね。ビスコンティはナチスを狂気と見たのでしょうか?
地獄に堕ちた勇者ども [DVD]
相続をめぐる家長的室内ドラマを背景に、ドイツ鋼業界は本音を言えばナチスとの軍産複合体制の夜明けを待望している。
一方、財界やプロイセン伝統のドイツ国防軍にとってヒトラー子飼いの私兵「突撃隊」は目ざわりである。
新生ドイツのために培ってきた協力関係も、ヒトラー政権が近づくほど煙たくなって罅割れが生じ、ついには粛清に至る。
こうした政治的妥協を巧みに用いたヒトラーの偽装的な中道路線の空恐ろしさを見事に描写した作品である。
この物語の底流には Ha'liebe すなわち憎悪愛がそこかしこに散りばめられていて、登場人物各々が未だ得たいの知れな
いナチスの魅力に撮り憑かれながら、性格的弱点にカンフル注射を打たれ権力に迎合していく小市民の傲岸さをヴィスコン
ティは喝破している。