オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽
そうですか、武満さん逝去から10年ですか。早いもんですね。それを機にして、しばらく入手困難だった映画音楽選集がBOX化。ボーナスCD(貴重なインタビューCD)もついてこの価格です。まず感涙しましょう。毎年、春になると何気に武満が聴きたくなるのは、彼の命日に感傷的になっているわけではなく、芽吹き、花咲く植物たちのような静謐なれど怪しいほどに力強い生命を感じたいからでしょう。彼の映画音楽はもちろん映画ありき、の作品群ではありますが、有体に言えば映画を知らずとも陽気の中で聴く者が思い思いに想いを馳せる楽しみを与えてくれるものです。あなたがもしジョン・ウィリアムズを10回聴くのだとしたら、その1回分の時間を、ぜひこの日本の産み出した典雅なる才能との出会いにしてほしいのです。春、武満。今も耳をそばだてたくなる美しい響きが陽気と妖気をかもしだします。そうですか、もう10年ですか。。。
Ran / Hiroshima Symphony / Fantasy Organ & Orch
このCDには、尾高惇忠の「オルガンとオーケストラのファンタジー」(世界初録音)、私とほぼ同年代の細川俊夫の「ヒロシマ・シンフォニー」(世界初録音)とともに、武満徹の映画音楽「乱」と「波の盆」が収められている。尾高と細川の曲が最初と最後で武満作品はそれに挟まれている。尾高の曲は編成から判るように、オルガンの壮大な音楽に圧倒される。反して、細川作品は、比較的静かに、しかも緊張感を湛えた曲です。間に入る武満の「波の盆」は、涙が出るように美しいメロディです。ライナーにも、指揮者が涙ながらに指揮しながらコンマスを見ると、彼も涙ぐんでいたそうな。確かに、この18分の組曲は、とても美しいメロディで、感動します。素晴らしい!武満作品の映画音楽にはまり込みそうです。
波の盆
ハワイの日系1世、山波公作(笠智衆)と妻ミサ(加藤治子)の1910年から1983年までの戦争を挟んだ日系移民の苦悩をテーマにした、倉本聰 脚本、実相寺昭雄 演出(!)による2時間ドラマのサウンドトラック盤のCD化。岩城宏之:指揮、東京コンサーツによる15曲、33分の美しいメロディに溢れた「音楽」です。1曲目のタイトル曲からあまりの美しい主題に圧倒されます。15曲の内、6、7、11曲目は、戦争の悲劇を表すため、異なる印象を受けますが、4曲目の「ミサと美沙」に現れる(ミサのテーマ)とのふたつの主題とその変奏曲により構成され、各楽器が次々に主題を受け渡すのだが、それが全く違和感無く全曲聴き通してしまう。このCD、実は、テレビ用録音の別テイクを収録しており、実際の放送では、映像に合わせるため、テープ編集されたものが使用された。指揮者:岩城氏によると、録音時に泣いてしまったそうで、他の人の音楽では、まずなかった、と2004年小学館発行の「武満徹全集 第5巻」で述べています。その全集は、この録音全曲はもとより、他のテレビ・ラジオ作品等CD14枚と450ページの解説、特筆すべきは、2004年に発見された17才の時の処女作「二つのメロディ」やジム・ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」のために録音したが、監督が音楽の強さ(美しさ)に画が負けるから、という理由でお蔵入りしたテープ録音全曲などを含んでおり、単売していない美しい武満音楽が堪能できます。このCD10枚分の価格ですが、ファンなら、お勧めです。なお、1996年に6曲の組曲版に編曲しており、シャンドスから尾高忠明・札幌交響楽団の録音が入手できます。