丹下左膳(一) 乾雲坤竜の巻 (光文社文庫)
本の好き嫌いしていませんか?
「え?大衆文学?う~ん僕純文学しか読まないんだよね~。」
「丹下左膳?あぁ知ってる!あれでしょ?『立てぇー!立つんだ○ョー!!』の人でしょ?」
読め!とりあえず読め!大衆文学の実力を思い知れ!
何が実力?まず主人公の丹下左膳が濃い!隻眼隻腕の狂剣士です。優しい言葉遣いになったが最後、嬌声と共に人を斬る。大菩薩峠の机竜之介がクールでニヒルな感じなら、こっちは狂気と妖気が漂ってます。
さらにこれでもか!っと物語が二転三転します。先読みが全くできん...。
ちなみに私個人としては、この後の「こけ猿の巻」より「乾雲坤竜の巻」の左膳方が好みです。
丹下左膳 [DVD]
昭和27年制作の阪東妻三郎版
元祖ハンディキャップヒーローと言えばやはり「姓は丹下、名は左膳」ですよね
こういったハンディキャップヒーローって世界に他にあるのかなぁ・・・
って色々思い浮かべてみましたが
「片腕必殺剣」にしても「盲目ガンマン」にしても「座頭市」以降で
丹下左膳ほど古いモノは思いつかないんですよね
ピーターパンのフック船長とか、悪役には色々いそうですけど
ヒーローとしてはいないかも
こういう本来弱いものが強いものに勝つのを喜ぶ「判官贔屓」は元々日本人独特の感性なんですかねー?
ところで
お話は定番のこけ猿の壺とチョビ安です
手塚治虫の漫画にもなってますね
定番の話だからか手馴れた感じで
思ったより展開のテンポもよく
カメラワークも面白い
めちゃ楽しめるきちんとした娯楽作品に仕上がってます
阪妻の金に目がくらんだり、飲んだくれてたり、ヒモ生活してたりの
ヒーローらしからぬ世俗まみれキャラがいい味出してるし
ヨメ、淡島千景とのツンデレやりとりも楽しい
でも決めるときはやっぱりキメてくれて
チョビ安が人質にとられて、素手で乗り込むラストはめちゃかっこいいですね
ただ、黒沢以前の時代劇は
刀と刀の当たった時の「ガキーン!」って音や
斬られた時の「ズバッ!」って音がないんですよね
本来はそんな音しないんでしょうけど
殺陣でこれがないと物足りなく思ってしまうのは僕だけでしょうか・・・
あと、ひとつ気になったのがお嬢さん(喜多川千鶴)が薹が立ち過ぎちゃうの・・・って点です
あれはローティーンぐらいの設定ですよ実際は、たぶん
「あの歳で人形遊び(そういうシーンがある)やってると寒いですよね」
「何でこういう配役になっちゃったんだろう」
って一緒に見た人と話してたんですが
結論として「敗戦後7年なんで、戦争で若手俳優が死んじゃっていなかったのでは」ということになりました
まぁ婚約相手の柳生源三郎(高田浩吉)も若くないんですけど、こっちはそれほど気にならなかったです
丹下左膳餘話 百萬兩の壺 [DVD]
この作品で描かれた丹下左膳像のあまりの変わり様に原作者は激怒したとか。でも私は今作の大河内傳次郎演じる左膳がたまらなく好きだ。カミさんの尻に敷かれっぱなしで、だらしが無い。口調は荒いが気は優しい。いきあたりばったりだが、約束は必ず守る。剣の腕が立ち、仇討ちともなれば鬼神のごとき強さを発揮する。躍動感溢れる殺陣。なんとも魅力的。これは例えれば、原作のイメージとはかなり掛け離れているものの、「カリオストロの城」の宮崎駿のルパン像をこよなく愛するのに似ている。逆説と繰り返しの手法を多用したムダのない物語、今でも充分通用するコメディセンス(望遠鏡を覗くシーンは爆笑)、ほんまもんの芸妓さん喜代三演じるお藤の艶っぽい歌と声、沢村国太郎演じる柳生源三郎の、全然柳生一族っぽくないのほほんぶり。定期的に何度も観たくなる傑作コメディ時代劇。字幕付きなのも二重丸。山中貞雄さん、あんたはどこまで天才だったんだ。
丹下左膳〈2〉こけ猿の巻 (光文社時代小説文庫)
莫大な柳生の埋蔵金の謎を秘めた「こけ猿の壷」。
それを巡って柳生家・不知火道場・左膳、おまけに幕府も加わっての四つどもえ。
左膳のキャラが丸くなり、チョビ安の親代わりをしてるのが泣かせます。
それでも妖刀「濡れ燕」の血を求めるクセは相変わらずだねぇ・・
山中貞雄日活作品集 DVD-BOX
発見された「百万両」の部分を収録したこと、劣悪だった「河内山」の音声に字幕を付けたことは素直に評価するが、フィルモグラフィがひど過ぎます。「大菩薩峠第一編甲源一刀流の巻」はコマ飛びが激しいなりに現存し、過去にビデオ化されていますし、「小判しぐれ」「海鳴り街道」は断片現存しているはずです。実際私はこの目で「海鳴り街道」の断片を観ました(大阪で)。制作者スタッフの方々に猛反省をして頂きたい。