三人妻 (岩波文庫)
尾崎紅葉の作品(『多情多恨』、『金色夜叉』もそうでしたが)を読んだ後は、
実においしい料理を食べた後のような満足感・幸福感にひたることができます。
(とはいいながら『多情多恨』のところではイライラさせられたとレビューし
ている私ですが・・・まあ大満足です、はい)
この『三人妻』もそうでして、なんといいますか、「いいものを読ませてもらった」
という満足感に浸れる作品でした。
なんとこの作品は紅葉が26歳の時の作品なのです。紅葉の教養の高さといいますか、
奥深さに感心せずにはいられません。実に豊穣な作品です。
明治20年代に26才の尾崎紅葉が描く、お才、紅梅、お艶の三人の女性の人物像が
興味深いですし、大富豪葛城余五郎がそれぞれの女性を口説いていく”作戦”はおも
しろく読み応えがあります。
文体は言文一致体ではありませんし、文語体ですが、露伴や一葉を読んだことのある
人には楽に読めると思います。
金色夜叉(通常版)
あまりにも有名過ぎ、かつベタなクライマックスに、笑いを堪える覚悟で購入しましたが、いざ、聴いてみると、笑いどころか、胸締め付けられる心持ちで、終了しました。
諏訪部さんの朗読の力もさる事ながら、文語体の言葉の美しさに魅せらました。
金色夜叉 (新潮文庫)
断然オススメです!
熱海で銅像にもなっている、主人公貫一が許婚のお宮を蹴っているシーンばかりがやたら有名なので「この男はなんてひどいんだ・復讐とかいってとっつきにくそうだし」と敬遠されがちですが、実際に読んでみるとそんな先入観はすぐに消えてぐいぐいのめり込まされます。
裏切られてあれほど嫌っていた高利貸しに身を落とす貫一と、玉の輿に乗りながらも満たされず貫一を思う宮。
苦悩する二人の心理描写も丁寧で、そこに絡んでくる様々な出来事も読者を飽きさせず、非常に先が気になります。
初めは地の文(会話以外の文)の硬さにやや戸惑いますが、すぐに慣れてしまうので心配はいりません。
書かれてから100年以上経っていますがそれが信じられないくらい全く色褪せない面白さ。それだけに未完なのが悔やまれるのですが、それでもオススメ!の作品です。通勤・通学のお供にも是非。