おじいさん―笠智衆写真集
何回目かの『東京物語』&原節子ブームの折に出版された写真集。1992年出版。
日本の俳優で誰が好きかと問われたら、少し悩んで女優なら原節子、男優なら笠智衆と答える。もちろん監督は小津安二郎が好きだ。
アイドル写真集でお馴染みの小沢忠恭氏撮影の写真集。美しい自然の中で笠智衆氏を捉えている。
出版当時はなんでこんなもの出すんだと思ったものだが、笠智衆氏の最晩年の姿が捉えられていて、笠智衆ファンだけでなく、原節子&小津安二郎ファンにももっと手に取ってもらいたい写真集である。
小津安二郎先生の思い出 (朝日文庫 り 2-2)
小津安二郎監督の第2作以降、1作を除き全作品に出演している著者が、小津監督を始めとする忘れ難い人々や出来事を語る貴重な証言集だ。最初はその他大勢だったのが、次第にフケ役で小津監督に抜擢される。年齢は1つしか違わないのに、徹底的に鍛えられ、何十回とNGを出すことが続いても監督の演出を信じ、小津監督を先生としか呼べない心境が吐露されるが、この師弟関係は麗しく、羨ましい。
本書は小津監督の素顔に触れるとともに、断片的だが、小津監督の名作がどのように作られたか、俳優として苦労した場面、見所等も解説してくれる。本書を読めば、晩春や東京物語等の作品も違って見えるだろう。小津監督だけでなく、原節子や杉村春子等の共演者に対する著者の眼差しも温かい。
本書はまた、小津組以外の、著者が一緒に仕事をした映画人や、蒲田・大船撮影所の雰囲気も伝えてくれる。サイレント期の映画人からヴィム・ヴェンダースまで印象を語るが、清水宏監督の評価が高いのはさすがだ。
口述筆記された本書は、映画の著者の台詞のような純朴さと独特のリズムがあり、気持ちよく読める。
小津安二郎大全集 (DVD 9枚組) BCP-027
このDVDを見つけたとき、値段が一桁間違っているのではないかと思いました。
購入したのが7月、すると8月2日に次のニュースが飛び込んできました。
『英BBC放送によると、英国映画協会発行の「サイト・アンド・サウンド」誌
が2日までに発表した、世界の映画監督358人が投票で決める最も優れた映画
に、小津安二郎監督の「東京物語」(1953年)が選ばれた。
批評家ら846人による投票でも同作品は3位だった。』
改めて「東京物語」を見直したのはいうまでもありません。感動しました。
秋刀魚の味 [VHS]
小津安二郎の遺作。
棒読みの台詞、真正面からのショットの連続といった小津演出の良さが
いまいち理解できない私は、見る目がないのか?花嫁の父の哀愁という題材も平凡。
この平凡さが醍醐味なのだろう。
俳優になろうか―「私の履歴書」 (朝日文庫)
小津安二郎作品への主演で有名な筆者の口述伝記。寺に生まれ、継ぐことを嫌って放蕩し、偶然に潜り込んだ俳優の世界。長い不遇の時代をしぶとく生きて、いつのまにか松竹の看板俳優に。小津のみならず、清水宏、稲垣浩、木下恵介、山田洋次といった大監督達の名作快作にも顔を出す。
大監督や俳優達のエピソードはどれも興味深いが、やはり小津監督との交流が興味深い。蓼科での合宿や九州旅行、白樺派との交際。映画の黄金期の余裕が感じられる、古き良き日本映画界の一ページが丁寧に語られる。その語り口は、映画の中での役柄そのままの、実直な人柄が感じられる。