Vinland Saga
シンフォニック・メタルなんですが、私は「シンフォニック・北欧フォルクローレ」としての側面にハマッてしまいました。
アルバム自体が一編の物語になっています。中世以前、伝説の地を目指して荒海に乗り出したノルウェー・ヴァイキングのサーガで、史実に基づく物語だそうです。
それだけに民族的な音も盛り込んだ意欲作になっていますが、逆にゴシック色からは若干遠ざかっています。
出だし1曲目は、まるで映画のプロローグのよう。霧の立ち込めるフィヨルドにゆっくりとカメラが進入し……刹那、霧の晴れ間に見えた先では、新造艦の進水式が!(…みたいなイメージね)
2曲目からは、デス声が海の漢たちの苦闘を、天使のソプラノが帰りを待つ女の想いをつづってゆきます。
9曲目にして冒険の航海は絶頂を迎え、物語は終曲「Ankomst」で再びフィヨルドの霧に包まれるように終わります。
このノルウェー語で歌う「Ankomst」が秀逸で、それはすべてを語り終えたシャーマンが、サーガの英雄達に静かな祈祷を捧げているようにさえ聞こえるのです。民族は違えども、私はここに「もののあはれ」と通底する感性を見ずにいられません。
全般的に言える事ですが、簡素な歌詞で北欧の巡る季節を歌い、バイキングの気骨を歌い、待ち人の素朴な心情を歌う。そんな古事記や万葉集にも似た美しさを持つメタルなんて、これが最初で最後かも知れません。(但し、この手のCDにありがちなお約束として、対訳はほぼ直訳。日本語としてお世辞にもほめられたものではありません…)
…なんかこう、メキメキと脳内補完してしまったので公平なレビューではないかも知れませんが、もはや手遅れです(笑)
シンフォニック・メタルの愛好家は言うに及ばず、幼少の頃に「小さなバイキング・ビッケ」(古っ!)が好きだった人は是非聴いて下さい!!
Njord
ノルウェーのゴシックメタルバンド、リーヴズ・アイズの3rd。2009作
リブ・クリスティン嬢の美しい歌唱と、美麗なシンフォニック・ゴシックサウンドで、
過去2作でファンの心をガッチリとつかんだこのバンド、期待の3作目も同様の傑作。
適度にモダンにアレンジされた楽曲は、ノルディックの涼やかな土着性とともに、
厚みのあるシンセワークとしっとりとした叙情美を含んでいて、じつに壮麗だ。
WITHIN TEMPTATIONの北欧版ともいうべき音楽性は、本作でさらなるダイナミックな
メジャー感も出てきた。個人的にはこうなるともはやデス声は無用にも思えるが、
リブ嬢のなよやかな歌声を引き立ててるのも確か。アコースティカルな風味を活かした曲や
“Scarborough Fair”のカヴァーなどもハマっている。シンフォニックゴシックの北からの回答。
Meredead
ノルウェーのゴシックメタルバンド、リーヴズ・アイズの2011年作
北欧の美麗系ゴシックメタルのトップを走るこのバンド、前作では頂点ともいうべき
素晴らしい傑作を作り出したが、基本的には方向性は変わらず。
オーケストラルな美麗なアレンジとリブ・クリスティン嬢の美しい歌声で、
本作も質の高いサウンドを聴かせてくれる。随所に北欧のトラッド風味を取り入れたアレンジも、
これまでになく叙情美にあふれていて、今作ではデスヴォイスの使用が控えめなこともあって、
幻想的な世界観をしっとりと楽しめる。MIKE OLDFIELDのカヴァー“To France”もじつに美しい。
前作ほどの派手さはないが、じわじわとくる叙情と北欧の空気に溢れた傑作だ。