![]() 若松孝二傑作選(5)アヴァンギャルド&フリー |
「ゆけゆけ二度目の処女」は、その映像表現のみならず、音楽が素晴らしかった。
主演の秋山道男(当時は、秋山未痴汚)が歌うあの歌も入ってる。映画の音そのまま ではなく、別録音された原盤のようであり、映画を観てなくても、アバンギャルド な音楽に浸ることはできる。 こんな珍盤は、もう二度と発売されることはないだろう。 その意味でプレミアム必至。買っておいて損はない。 |
![]() 連句アニメーション 冬の日 [DVD] |
まず第一にユーリノルシュテインのアニメが見られる点が嬉しい。ご存知の通り 彼は極端に寡作な作家である。「話の話」の後は ゴーゴリの「外套」を製作しているらしいが それにしても「話の話」自体は20年程度前の作品である。そんな彼の本作でのアニメであるが これは美しい作品である。枯葉や落ち葉を描かせたらユーリの右に出る人はいないだろう。短い作品ながら陶然として見た。これだけでも 本作を観る価値はあると改めて思った。
次に連句とアニメがかように相性が良いことに心地よい興奮を感じた。考えてみると17文字しか使えない俳句が何かをあらわそうとしたら 当然ながら大きな「飛躍」は避けられないというのが 俳句の背負っている宿命である。また 俳句の持つ性格としては ビジュアルに訴えることの重要性がある。「飛躍するビジュアルな表現」と抽象するとこれはアニメではないか。 「古池や 蛙飛び込む 水の音」という芭蕉の俳句を映像化するに際して 実写かアニメかと聞くのも野暮である。 ということで 実に粋なアニメ映画である。これは正真正銘の「事件」であるとすら思うのだ。 安くは無いDVDだが 大丈夫 安いです。 |
![]() 赤色エレジー [DVD] |
懐かしの名作劇画の映像化。冒頭、壮年の男性(原作の漫画家であり本作の監督でもある林静一さんらしき姿かたちの人物)が、かつての4畳半を訪れ過去を振り返るというシークエンスから物語は始まる。しかし、林さんご自身は原作を描いていた当時には同棲経験がなかったそうで、また、主人公のように東北が故郷でもないとのこと。林さんも職業アニメーターであったことから、『赤色エレジー』があたかも私劇画であるかのように「誤解」(もっとも林さん自身それを楽しまれているように見えるけれど)されることも多いようだが、この物語は案外クールな視点から描かれているように思う。物語を断ち切るかのような、ラストシーンでの「幸子」の所作―全編新作の絵そして色彩―が本当にすばらしい。 |
![]() 赤色エレジー (小学館文庫) |
日本には「ハイク」という詩形式があり、池にカエルがとび込んだ、という記述のみによって宇宙全体を表現する、と学びましたが、あまり信じてはいませんでした。私は間違いを認めなくてはなりません。今、『赤色エレジー』に出会った後では信じられます。狭く貧しいアパートメントに生起する簡素なマンガストーリーが何故、こんなにも広大な世界を思わせますか。ほんとうに不思議です。何も描かれていない余白には「ZEN(禅)」の気韻が満ち、何も説明しないショットがすべてを語り、直接エロチックな描写はないのに逆にそれが、あるいは沁みわたるようなエロス。これが「ハイク」精華であるのは大きな奇跡で、東洋の魔法です。横四段に仕切られた画面コマの中で空を仰ぎ、肩を揺すり、ポケットに手を入れたまま俯いて走り出す一郎の、大いに単純化された黒い配置は、写真集で見た「竜安寺」の石庭のようです。大胆で精妙な人物カタチの動きには林静一のアニメーターとしての経験の投影が明らかで、あらためてアニメは現代日本文化の象徴であると、想起されます。これを読まない人は可哀想です真実。 |
![]() 小梅ちゃん―初恋すとおりい |
正直言って、評価が割れると思います。 吉元由美、谷村志穂による小梅ちゃん小説では懐古的世界が展開しております。狙いはそこでしょうが、個人的には林静一画伯の絵あっての小梅ちゃんだな、と再確認しました。ま自分の中に小梅のイメージがあるからそうなんですけど。加えて小説の字がでかい。 しかし。小梅アーカイブスの箇所は面白かった。CMやキーワード、従姉妹たち(知ってました?)ここがもっと詳しければ…。ページは全体の四分の一もないような…。小説メインかぁ、で星3つ。企画をもうちょい活かしてほしかったかも。 でも小梅ちゃんの絵や雰囲気に心酔していて小春や小雪などのシリーズ飴も買ってた方なら「まあお楽しみいただける御本でせう。」 |