”フラッターケーブル”さんがいつものように、詳細な曲目リストを上げていて、それを参考に購入。そのご意見にも賛同。
バイロン・ジャニスはホロヴィッツのただ一人の弟子であり、この若き頃の録音群を聴くと、まずその
タッチのクリアさに、なぜホロヴィッツが聴いたとたん魅了されたかがよく理解できる。ジャニスの録音はいままで、米マーキュリーの一連の録音(BrilliantレーベルのBOXセットでそれが確認できる)でしか知らず、その前にRCAにこれだけの録音を残していたことを、初めて知った。1CDあたりの収録時間は短く、最初の1枚など30分以下である。昔の45回転盤をベースにしているからか?いずれにしても
ジャズバンドと組んだ、ラプソディー・イン・ブルーも含め貴重である。
彼の演奏についてはマーキュリーの録音のチャイコフスキーやラフマニノフが印象に残っていて、ホロヴィッツに似て後期ロマン派に特徴が良く現れると思い込んでいた。このBOXセットを聴いてみると、
ベートーベン(テンペスト、ワルトシュタイン、30番)でのストイックでスタイリッシュな演奏が、鋼のような
タッチで展開され、ホロヴィッツのような恣意性(これは批判ではない、そこに彼の天才性が現れる)があまりないことに気づく。展覧会の絵などは彼の影響があると思う。実際こびととかサミュエルゴールデンベルクとシミュイレなどの早いパッセージなど鬼気迫る迫力がある。協奏曲ではミュンシュとのラフマニノフの3番などさくさく早めのテンポで進むが、けっして即物的なものではなく感興にのったテンポの動きがあり、さすがにミュンシュは説得力ある表現の演奏を聞かせる(3楽章の終わり近くのテーマが早く歌われる中の弦の刻みの表現的なところとか)。
まだ全部を聴いていないが、録音は1951年のモノラル録音であるテンペストも含め非常にクリアで、同時期のEMIなどのもやっとした感じ録音と鋭い対象をなす。彼の演奏にぴったりである。
以前より、後年病気を得たとして、なぜ、早い時期に活動があまりきかれなくなったか疑問だったが、ある文章で、60年代初頭に、チャイコフスキーコンクールで優勝したヴァン・クライバーンの登場により、RCAがそちらに興味を移し、人気を食われてしまったことが一因であるといった趣旨、が書かれていたが、なるほどと思った。
ラフマニノフの3番協奏曲、彼のベスト盤です。ミュンシュ指揮のRCA盤と甲乙つけがたいですが、そちらはどちらかというと巨匠の音楽の忠実な召使いのようですが、ドラティ指揮のこちらの方は自由奔放で天空を駆けまわる翼のついたピアノを操る魔法使いのカッコイイお兄さん。ともあれ、こんな安い値段で彼の歴史的名演奏を聴けるチャンスは逃すべからず。