「スピリッツ」に連載されていた土田世紀・幻の傑作コミック『俺節』の、同名主題歌。題字を手がけ、劇中にも激似キャラが重要な役柄で登場する(!)サブちゃん=北島三郎が作曲(ペンネーム/原 譲二)・プロデュースを担当(作詩は土田自身)、付き人として彼のもとで修業していた小林ひさしが、『俺節』主人公のコージ同様、この歌でデビュー、ということになった。
一聴してまず驚くのが、その曲調。たとえば、吉田拓郎が自分自身のために書いた楽曲あたりを思わせるもので、同じサブちゃんのペンによる「浪漫―ROMAN」(憲三郎&ジョージ山本)よりも、もっとヤングな感じ(?!)なのだ(アレンジは、浜省はじめ日本のロック、ポップスの各方面でその名が出てくるギタリスト、水谷竜緒[公生])。さすがサブちゃん、かつては大橋純子、もんた&ブラザーズらポップス系のアーティストも自らの事務所に擁していただけのことはある?!
そんな曲調が、小林のクセのないストレートな歌唱、そしてコージの不器用な生きざまと見事なシンクロぶりをみせているのが、この名曲「俺節」だ。
一方のカッ
プリング曲にして挿入歌「俺の俺節」は、全面的にコテコテのド演歌で(作詩はいとうせいこう)、小林の歌い方も一転、(やはり作曲の)サブちゃんそのまんまだったりするのだが、それはそれで味、ととるべきか。
なお、このシングル、
ジャケットが土田世紀による描きおろしだったこともあってコレクターズ・アイテムとなり、入手はきわめて困難。音源そのものは、複数のオムニバス盤(「俺節」のみ)、および小林の『ファーストアルバム「始めまして」ひさしです』で(こちらには2曲とも収録)聴くことができ、さらに「俺節」は、
ジャケットにコージとオキナワがあしらわれた2006年発売のオムニバス『
男酒 男泣き』にも収められている。
大昔TVで見た番組で是非ともDVD化して欲しいと望んでいた作品が2つあります。1つが有吉佐和子原作/影万里江主演の「悪女について」で、もう1つがこの「風」です(どなたか「悪女」もDVD化していただけないでしょうか!)。当時中学生の私は、家族が居間の大型TVで何か別の番組を見ていたので、ひとり別室でソニーのポータブルTVに齧りついて見たものでした。それまでの時代劇とは随分と違う実験的なシリーズでした。大凧に乗った風の新十郎が名古屋城の金の鯱を盗んじゃうなんて荒唐無稽なストーリーがあったりします。また実相寺昭雄氏(もちろん当時は誰だか知りませんでしたが・・・)が監督した作品は、その独特なカメラワークと照明でその後もしっかりと記憶に残っていました。でも何と言っても一番の魅力は、栗塚旭扮する風の新十郎のカッコよさと土田早苗扮する網タイツをはいたくノ一(くのいち)忍者の色っぽさです。嗚呼、青春がよみがえります!