著者自身が「私小説作家」を標榜するだけあって、この作品でもその持ち味は存分に発揮されている。とにかく一筋縄ではいかない著者のパーソナリティーが垣間見れるようで面白い。そこが嫌だという人もいるでしょうが・・・。
発送・梱包ともよかったです。
作品もすばらしいです。R落ちの一番安いのでいいや、と思ってたので、とてもお得な買い物をした気分です。
自ら主役の適性を確信し申し出たという寺島しのぶさんは、 確かに正しかった。 最後の一瞬に初めて、笑うことが出来た主人公の男を演じて見せた 荒戸源次郎氏のその笑顔にも、ゾクッとさせられました。
音が本当にいいです。 聴いていると、雑多な通り・暗いアパートの廊下が、自分の前に有るようです。 映画を見た方なら、映画の風景のように。 でも、原作だけを読んで、自分だけの光景があって、その時点で聴けば良かったかなー、とも思っています。 原作から自分なりに浮かべた光景に、このCDの音楽は、 リアルな色を付けてくれるような気がします。 「漂う」感じの、音です。
「どんな人間にも本来、生死に意味も、価値もない。」 「偽りとは人が為すと書く。」 私小説家である作者が、表層的な道徳や価値観を徹底的に否定して生きている姿に凄みすら覚えた。どこか人恋しさの裏返しに写る太宰治の小説よりも、ずっと孤高な感を受ける私小説。車谷長吉は文学者としていろんな意味ですごいところにいるのではないかと思った。 しかしながら、他人との関係性から生ずる感情など捨てたはずの主人公がアヤちゃんとの最後の数日間の中で見せる感情のブレに、切なさが滲む。作者が捨てられない「人間であることの何か」がそこには明確にあった。
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