短編映画というと実験性の強い作品や、低予算で技術的に未熟な習作を連想しがちですが、この短編集には完成度の高い秀作が収められています。特に(3)(4)(5)は、長編劇映画に引けをとらない仕上がりです。
監督もジャンルもバラバラな6作品ですが、作品の繋ぎに挿入された10秒ほどの超短編アニメ・シリーズ('66-'67独)が後に続く作品のイントロダクションとなり、全体として一本の流れを構成しているようなのが、コンピレーションと呼ぶ理由でしょう。
(1)「ジュテーム・ジョン・ウェイン」('00英)は、ヌーヴェルヴァーグ好きは思わずニヤリとさせられる、初期ゴダールにオマージュを捧げた作風。舞台は
ロンドンだが、その入れ込みようはかなりのもの。
(2)「ゴースト・タウン」('99
ブラジル)は、ジットリ暑いポップアート調アニメ。音楽はカッコいいが、キャラもストーリーも脱力系で、本DVDを制作したセレクト・ショップBEAMSのイメージに一番近いかも。
(3)「クレイジー・コーヒー」('00米)は、コーヒー60杯の一気飲みに挑戦する男が描かれる。一部で評判となったドキュメンタリー「スーパーサイズ・ミー」('04)に影響を与えたかも??
(4)「
タイヤ」('00英)は、詩的な一編。車を走らせる多忙なビジネスマンが、丘陵でパンクに見舞われたことから、自分を取り戻すまでを描く。
フランス映画の名作「赤い風船」('56)を思い出した。
(5)「未来テレビ」('00豪)も、心に残る傑作。部屋のテレビが突然主人公の未来を映し始める。彼女の未来に幸福はあるか?未来を観た彼女は一体どうするのか?引き込まれる展開に、最後まで目を離せない。
(6)「ハーベル&デイジー」('95スロバキア)は、前の作品の後味から一転、昔懐かしいような
ミツバチ・アニメ。(ハッチやマーヤはいるが、そんなジャンルあり?)ウォームでハッピーな気分にさせてくれる。
幼いころの記憶と、現在の関係。子供から大人へ成長してきた私たち。そんなありふれた背景の中で、ただ一つ引っ掛かっていた「めんま」という存在をめぐり、主人公たちは自分達の人生を見直して、止まっていた時間を再び動かしていく。 まず、主人公達の、幼少期→現在(前半)→中盤→後半と移り変わっていく感情や心理の描写が、限られた時間で充分に描かれています。主人公達が何を考え、何を感じ、どのように行動していくのか。それを自分と照らし合わせて観る事が出来たので、とても入り込むことが出来ました。 この時期の葛藤や悩みが上手く表現されていて、登場人物の心情をじんじわと感じさせられ、そして、言うべき所で言ってくれる。そんな感じです。 めんまが見える事など、監督さんの尋常でないこだわりも感じます。 キャラクターの絵や背景も素晴らしいです。 特に町の風景は、この作品全体に流れる温かく懐かしくも、時に鋭く、そして切ない空気を表現するのに、大きな役割を果たしています。 五感にうったえかけてくるような、心へ絶妙なアプローチをしてきてくれた作品です。 作品と作画も合っていますし、演技も実力を感じます。 総じて素晴らしい!!