南西諸島の孤島の空自の通信基地。僻地のため司令自ら地域住民との交流を重視し良好な関係を保っていた。そこでおこった小銃消失事件。
調査部のコンビが送り込まれる。事件は外敵にさらされても法規制により何もできないことに不満を感じた若手が問題提議のためにあえて起こしたものだが、自衛隊自体のアイデンティティの矛盾がその根源にある。サイドストーリーとして在日韓国人と旧軍、自衛隊の関係も語られる。エンタメとして一定レベルの上に、重いテーマに挑んだ意欲作。Bの上。
歴代のメフィスト賞受賞作のなかで最もページ数が少ないのではないかと思われる本作。
自衛隊の基地を舞台に密室に仕掛けられた
盗聴器の謎を巡る一応ミステリーだが、メフィスト賞らしい奇抜なトリックやキワモノ臭は全くなく、いわゆるメフィスト賞らしさがないまともな作品である。後に
直木賞候補になる作者らしい、端正な非常にまとまったデビュー作で、ミステリーというよりは自衛隊内の内情や人間関係をユーモラスに描く方に重点が置かれている。メフィスト賞ファンよりはどちらかというと江戸川乱歩賞ファン向けという感じがする。